国指定史跡ガイド 「播州葡萄園跡」の解説
ばんしゅうぶどうえんあと【播州葡萄園跡】
兵庫県加古郡稲美町印南にある農業遺跡。加古川と明石川に挟まれた印南野(いなみの)台地の中央平坦部に位置する施設跡で、1880年(明治13)、明治政府が葡萄栽培・醸造試験を目的として開設した。葡萄樹の栽培、醸造に適した温暖で乾燥した土地として、30町2反余の土地を選定し、苗樹を植え付け、管理事務所である園舎や葡萄実験栽培用のガラス温室、醸造場などの施設を建設した。1884年(明治17)には1005貫の収穫から6石の葡萄酒を生産し、年末の段階で葡萄樹は11万1305本を数えたが、翌年には葡萄樹の害虫フィロキセラが発生、天候不順もあって収穫は大幅に減少したという。その後、官業払い下げの一環として前田正名に経営が委嘱され、1888年(明治21)、同人に払い下げられた。明治20年代後半に廃園となったが、発掘調査によって醸造場建物跡、ガラス温室建物跡2棟、礫(れき)敷き暗渠(あんきょ)、排水溝などが見つかり、未開栓を含むワインボトルや陶磁器、金属類などの遺物が出土した。明治政府の殖産興業政策の様相を知るうえで重要であることから、2006年(平成18)に国の史跡に指定、翌2007年(平成19)には未指定部分の追加指定があり、これにより史跡の全体面積は約5万m2になった。播州葡萄園歴史の館で葡萄園跡の解説や資料展示を実施している。JR山陽本線土山駅から車で約18分。