加古川(読み)かこがわ

精選版 日本国語大辞典 「加古川」の意味・読み・例文・類語

かこ‐がわ ‥がは【加古川】

[一] 兵庫県の中央部を貫流し、高砂市で播磨灘に注ぐ、県内最大の川。江戸時代は物資の輸送路として、現在は灌漑(かんがい)用水、工業用水などに利用される。氷の川(古事記)。鹿児の河(播磨風土記)。
※太平記(14C後)一六「賀古川(カコガハ)の西なる岡に陣を取て」
[二] 兵庫県南部の地名。播磨平野の東部、加古川の下流域にある。古くは西国街道の宿場町、のち加古川を上下する高瀬舟の発着場として栄えた。現在は臨海部の埋立地を中心に重化学工業が盛ん。鶴林寺、日岡御陵がある。昭和二五年(一九五〇)市制。

かこがわ かこがは【加古川】

姓氏の一つ。

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デジタル大辞泉 「加古川」の意味・読み・例文・類語

かこ‐がわ〔‐がは〕【加古川】

兵庫県中南部を流れる川。上流は佐治川とよばれる。高砂たかさご市と加古川市との境で播磨灘はりまなだに注ぐ。長さ約86.5キロ。
兵庫県、加古川の下流東岸にある市。古代の賀古駅かこのうまやの地。工業団地化、ベッドタウン化が進む。鶴林かくりんがある。人口26.7万(2010)。

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日本歴史地名大系 「加古川」の解説

加古川
かこがわ

水源を青垣あおがき町と山東さんとう町の境、標高九六二・三メートルの粟鹿あわが山の谷間に発し、県域のほぼ中央を北から南へ縦断する県下第一の河川。篠山川杉原すぎはら川・東条とうじよう川・万願寺まんがんじ川・美嚢みの川を合し、東播平野を貫流して播磨灘へと注ぐ。幹川の全長は九六キロ、流域面積二二二〇平方キロで県面積の約二一パーセントを占める。一級河川。東播磨の八市一七町を潤し、受益人口七五万。

〔古代・中世の加古川〕

古くは印南いなみ(「播磨国風土記」賀古郡条)と称された。「古事記」孝霊天皇段にみえる「針間の氷河」を加古川とする説もある。中世になると賀古川(建久三年八月二五日「官宣旨案」浄土寺文書、「太平記」巻一六)、加古川(康永二年五月二〇日「赤松義則書下案」報恩寺文書)と記されるようになる。「日本書紀」応神天皇一三年条に「一云」として「鹿子水門」、「続日本紀」延暦八年(七八九)一二月八日条・同一〇年一一月六日条に「水児船瀬」がみえる。いずれも当川河口辺りをさすと考えられ、古くから湊の存在が推測される。律令制下には山陽道が現在の国道二号にほぼ沿って通り、東岸に賀古駅が設けられた。中世には東岸に加古川宿(いずれも現加古川市)が成立した。

建久三年(一一九二)八月二五日の前掲官宣旨案によると、奈良東大寺領大部おおべ(現小野市)の四至示の改立に際し、西は賀古川を限っている。応永二年(一三九五)五月二〇日赤松義則は後宇多上皇院宣にまかせて、報恩ほうおん寺領へい都染つそめ益田ますだ西条さいじよう北条ほうじよう(現加古川市)、加納の加古川流域での殺生禁断を命じている(「赤松義則書下案」報恩寺文書)。応永三二年七月二五日夜加古川は大洪水を記録(「鎮増私聞書」昌楽寺文書)。永享四年(一四三二)八月、足利義教の兵庫と播磨下向に際しての諸準備のなかに「賀古河之橋」がみえ、架橋されていたことが知られる(同五年五月日「矢野庄学衆方年貢等算用状」教王護国寺文書)。嘉吉元年(一四四一)八月二六日幕府軍との合戦において、赤松左馬助(則繁)は賀古川で溺死した(「建内記」同年九月二日条)。文亀四年(一五〇四)の徳禅寺領播磨国三庄年貢算用状(徳禅寺文書)には、賀古川船賃として一〇〇文が記載されている。永正一七年(一五二〇)赤松義村は賀古川で簗漁を行う者がいたため、流域の平・都染・益田の三庄の殺生禁断遵守を命じた(同年八月二二日「赤松義村奉行人連署奉書」報恩寺文書)。天正一五年(一五八七)三月四日豊臣秀吉は島津討伐に出陣する軍勢を運ぶため、加古川の渡船として近辺の船を動員することを賀須屋数正に命じている(「豊臣秀吉朱印状」糟屋文書)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「加古川」の意味・わかりやすい解説

加古川
かこがわ

兵庫県南部を流れて瀬戸内海に注ぐ県下最大の一級河川。延長96キロメートル。支流は篠山(ささやま)川、杉原川、東条川、美嚢(みのう)川など大小130に及び、流域面積は1730平方キロメートル。朝来(あさご)市山東(さんとう)町地区と丹波(たんば)市青垣(あおがき)町地区の境界にある粟鹿山(あわがやま)(962メートル)に発し、氷上盆地を潤して播磨(はりま)に入り、加東(かとう)市の闘竜灘(とうりゅうなだ)でいったん河床が狭まるが、下流では加古川市、高砂(たかさご)市、播磨町に及ぶ広大な三角州を形成している。流路が変化し、水害に悩まされた川であるが、河床勾配(こうばい)が緩やかで、かつては河口の高砂から上流の丹波市本郷まで高瀬舟が盛んに往来した。近世の印南野(いなみの)の開拓には加古川の水が引かれ、現在は農業用水の東条湖、工業用水の平荘湖(へいそうこ)などが築かれ、利用価値はいっそう高まっている。

[大槻 守]

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百科事典マイペディア 「加古川」の意味・わかりやすい解説

加古川【かこがわ】

兵庫県中東部を南流する川。長さ96km,流域面積1730km2。氷上郡青垣町(現・丹波市)の遠阪峠付近に発する佐治川が篠山(ささやま)川と合して加古川となり,杉原川を合し,下流に播磨(はりま)平野の一部を形成,播磨灘に注ぐ。《万葉集》などに印南(いなみ)川とみえ,中世には加古川宿があった。かつて山間盆地の米を運ぶ舟運が盛んであった。灌漑(かんがい)・工業・上水道用水として重要。
→関連項目加古川[市]滝野[町]西脇[市]兵庫[県]福泊社[町]八千代[町]

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改訂新版 世界大百科事典 「加古川」の意味・わかりやすい解説

加古川[市] (かこがわ)

兵庫県南部,加古川の形成する三角州上に発達した工業都市。1950年加古川町と神野,野口,平岡,尾上の4村が合体,市制。人口26万6937(2010)。歴史は古く,古代には山陽道の賀古駅が置かれていた。現在の市街地は加古川左岸の渡船場として栄えた鎌倉時代以降に発達したもので,江戸時代には本陣が設けられ,宿場町,河港として重要であった。明治に入ると肥料,毛織物の近代工場が立地したが,本格的な工業化は1964年の工業整備特別地域指定以降である。とくに臨海の埋立地(430万m2)には神戸製鋼加古川製鉄所とその関連企業が立地し,一躍県下有数の工業都市に変貌した。また山陽本線の電化や快速電車の延長により神戸の通勤圏に入り,内陸部では公営や民間の住宅団地が相次いで建設された。JR加古川線,山陽電鉄線が通じ,山陽自動車道のインターチェンジがある。市内には聖徳太子創建と伝え,西の法隆寺と呼ばれる鶴林寺のほか,尾上の松で著名な尾上神社があり,北部の丘陵は県立自然公園に指定されている。
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加古川 (かこがわ)

兵庫県南部,播磨平野東部を南流して瀬戸内海に注ぐ県下第一の川。幹川流路延長96km,全流域面積1730km2。京都府との境の遠阪峠付近から発する佐治川と,篠山(ささやま)盆地の水を集めて西流する篠山川が丹波市の旧山南町で合流して加古川となり,以後杉原川,東条川,美囊(みのう)川などの支流を合わせて播磨灘に注ぐ。中流の西脇市付近までは小盆地群を貫いて流れ,丘陵や段丘の発達した播磨平野に入ると川幅も広がり,下流では広大な三角州を形成する。こう配がゆるやかなため,江戸時代初期から高瀬舟による水運が盛んで,大正年間に山陽本線と福知山線を結んで川沿いに加古川線が開通するまでは,河口の高砂や中流の滝野は農産物の集散地として繁栄した。加古川の水は雨の少ないこの地方では,無数の溜池の水源として貴重であり,また先染の播州織の特産地である西脇市では,杉原川の水が染色に利用された。播磨臨海工業地帯の水源としても重要になっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「加古川」の意味・わかりやすい解説

加古川
かこがわ

兵庫県南部を流れる川。中国山地東部の粟鹿山 (962m) に発する佐治川が中流で篠山川を合せて加古川となり,高砂市で播磨灘に注ぐ。全長 90km。県内最大の川で流域に姫路平野東部を形成。鉄道発達以前は播磨地方の重要な内陸水路であった。灌漑用水,上水道,播磨工業地域の工業用水源として重要。

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世界大百科事典(旧版)内の加古川の言及

【播磨国】より

… 《旧事本紀》は律令制にもとづく播磨国の成立以前,明石国造,針間鴨国造,針間国造の3国造がいたとする。播磨東部,加古川流域,市川,揖保川流域をそれぞれ勢力範囲としたのであろう。大和朝廷は縮見(しじみ),牛鹿,飾磨,越部などの屯倉(みやけ)や,日下部,矢田部,私(きさい)部,湯坐(ゆえ)部,山部,海(あま)部などの部民を置いて,勢力の浸透をはかった。…

※「加古川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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