山田彦左衛門尉正重(生没年不詳)の著した江戸初期の数学書。山田は本書によれば父とともに普請関係の役人をしていたらしい。大和の郡山の人である。出版年は不明であるが,今日伝わる書は1659年(万治2)が初版と思われる。吉田光由が《塵劫記(じんごうき)》(1627)を著作して,初歩から中級程度の入門書として広く読まれたが,《改算記》は《塵劫記》の次にベストセラーとなり,幕末まで愛読された。“塵劫”が数学あるいは珠算の意味に用いられるようになったのに対し,《改算記》はそこまではいかなくとも,《改算塵劫記》のような書名が現れるほどによく知られていた。《塵劫記》より後に出版されたので,《塵劫記》の解説という色合いが濃いが,内容が豊富で,亀井割,弾道,月塩知死後などの問題も含まれている。本書の名前は,《塵劫記》,今村知商の《因帰算歌(いんきさんか)》(1640),榎並和澄の《参両録》(1653)などの数学書の誤りを訂正するという意味でつけられている。《参両録》を非難するとともに,《塵劫記》の遺題を解き,さらに遺題11問を提出したことによって,遺題継承に拍車をかけた。
執筆者:下平 和夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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