整域(読み)せいいき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「整域」の意味・わかりやすい解説

整域
せいいき

数学用語。単位元1をもつ可換環Aが(1)Aの元a、bに対し
  ab=0⇒a=0 または b=0
(2)1と0は異なるを満たすとき、Aを整域という。整数環Zと、体k係数の多項式環k[X]は整域である。また、体と、体の1を含む部分環は整域である。整数環Zから有理数体Qをつくるように、任意の整域Aから、Aを部分環として含む最小の体Kを次のようにつくることができる。

 Kを記号a/b(a,b∈A,b≠0)で表される元の集合とする。ただし、
(3)a/b=a'/b'⇔ab'=a'bとする。Kの元の和と積を、有理数のときと同じように
(4)(a1/b1)+(a2/b2)
   =(a1b2+a2b1)/(b1b2)
(5)(a1/b1)(a2/b2)
   =(a1a2)/(b1b2)
と定義すると、この和・積は(3)の同値関係と矛盾せず、Kを体にする。このとき、Aの元aをa/1と同一視すると、体Kは、Aを部分環として含むような最小の体であることがわかる。このKを整域Aの商体という。整域Zの商体はQであり、多項式環k[X]の商体は有理関数体
k(X)={f(X)/g(X)|f,g∈k[X]g≡0}
である。

[菅野恒雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「整域」の意味・わかりやすい解説

整域
せいいき
integral domain

単位元をもつ環であって,零因子をもたないものを整域という。乗法交換法則を付加することもある。整数全体のつくる環は,零因子をもたない可換環であるから,1つの整域である。また m を法とする剰余類全体のつくる環は,m素数であるときに限って整域である。その他,有理数の環,実数の環,複素数の環,あるいは実数係数の多項式環も整域である。整域については,整数から分数をつくるときのようにして,体をつくることができる。体はもちろん整域である。

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世界大百科事典(旧版)内の整域の言及

【環】より

…左,右零因子を総称し,零因子という。(2)整域 零因子をもたない可換環を,整域という。有理整数環Zや,整域Aを係数とする多項式環AX]は,整域である。…

※「整域」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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