翻訳|prime number
2以上の自然数で、1とその数以外では割り切れない数。無限にある。自然数を素数の積で表すことを素因数分解といい、例えば60は2と3と5の積に分解できる。大きな素数をかけた数ほど素因数分解が難しくなるため、ITの世界では「素因数分解できたら鍵が開く」という仕組みの暗号に使われる。10349は二つの素数131と79の積だが、手計算だとすぐには分からない。これも計算機では簡単に判明するため、暗号にはもっと大きな桁の数が用いられる。極めて大きな素数を見つけ出す競争も行われ、これまでに1742万5170桁の素数が発見されている。
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1と自分自身以外に約数をもたない自然数のうち1でないものを素数という。自然数aが自然数bを割り切ることをa|bという記号で表す。1でない自然数pが素数であることはまた、自然数a、bに対してp|abならば、p|aまたはp|bが成り立つ、ともいいかえられる。
ユークリッドの『ストイケイア』のなかに、素数は無数に存在することが証明されている。その証明を現代風に述べてみる。2、3、5、……、pがすべての素数であるとし、N=(2・3・5・……・p)+1という数を考える。Nは2、3、5、……、pのいずれによっても割り切れない。したがって1と自分自身以外に約数をもたないのでNは素数である。Nは2、3、5、……、pのどれにも一致しないから、それらがすべての素数であるという仮定に反する。したがって素数の数は有限ではない。
素数表をつくるには「エラトステネスのふるい」と称する方法を用いる。現代でも基本的にはこの方法を改良して素数表をつくる。最初に2から順に自然数を並べる。まず2を残し、2の倍数を消していく。次に残った数のなかで最小の数3を残し、3の倍数を消していく。次に残った数のなかで最小の数5を残し、5の倍数を消していく。以下同様に続けて素数表を得る。なおエラトステネスは紀元前3世紀ごろのギリシアの天文学者・地理学者である。
2以上の自然数は素数の積として表せる。またその表し方は順序を除けば一意的である。たとえば12は3×2×2と素因数分解される。それ以外にも2×2×3,2×3×2と素因数分解が考えられるが、これらはすべて因数の順序を入れ換えれば同一の分解となる。素因数分解とその一意性についてはユークリッドの『ストイケイア』に記述があるが、その重要性は、ガウスの『数論研究』Disquisitiones Arithmeticae(1801)に至るまで十分認識されなかった。その重要性は、複素数にまで整数の概念を拡張するとき、かならずしも素因数分解とその一意性が成り立たないことによって逆に認識される。
11と13、17と19のように差が2の素数の組を双子素数という。双子素数は無数に存在するという予想があるが、現在未解決の問題である。
[足立恒雄]
たとえば一位の数が1である素数としては11,31,41,61,71などがある。また一位の数が3である素数としては3,13,23,43,53,73,83などがある。はたしてこれらの素数はそれぞれ無数にあるだろうか。このような素数の無限性を精密にした疑問に答えるのが算術級数の定理であって、1837年ディリクレによって初めて正確に証明された。
いま、a、dを互いに素な自然数とする。等差数列a,a+d,a+2d,……,a+nd,……のなかには無数に素数が存在する。たとえばaを1、dを10とすれば、一位の数が1である素数が無数に存在することを意味する。証明は
という素数のすべてにわたる和の級数に関する性質を用いて行われる。とくにsが1に近づくときf(s)は発散する。このことから素数が無数にあることがわかる。なぜなら、有限個ならばf(s)はいつでも確定するはずだからである。
算術級数の定理は単なる興味を超えた、基本的定理である。同じことが一次以上の多項式についていえるかは、まったく未知の問題である。たとえば
n2+1 (nは自然数)
の形の素数が無数にあるかどうか、いまだにわかっていない。
[足立恒雄]
自然数xを超えない素数の個数をπ(x)で表す。たとえば
π(2)=1, π(10)=4,
π(100)=25,π(1000)=168
である。アダマールとド・ラ・バレ・プーサンは1896年独立に素数定理、すなわち
が成り立つことを証明した。したがって大きなxについてはπ(x)はほぼx/logxに等しい。たとえばx=107のとき
π(x)=664579,
x/logx=620417
である。
素数のように不規則に分布するものがx/logxという簡単な関数によって近似され、しかも、それが証明されるというのは驚くべきことであろう。初期の証明には関数論の深い結果が用いられたが、セルバーグによって関数論を用いない証明が得られている(1949)。
[足立恒雄]
1よりも大きい自然数で,1と自分自身以外に約数をもたないもの。例えば,2,3,5,7,11などである。2以外の素数は奇数なので奇素数という。1以外の自然数で素数でないものおよびそれにマイナスの符号をつけたもの(±4,±6など)を合成数という。与えられた自然数nが素数かどうかを判定するには\(\sqrt{n}\)以下の素数で割れるかどうか調べてみればよい。\(\sqrt{n}\)以下の数が素数かどうかわからなければそれでも割ってみる。しかし大きな自然数が素数かどうかを判定するのは一般に容易でない。自然数の中から素数を選び出すエラトステネスのふるいと呼ばれる方法が知られている。素数の判定が容易でないため,大きい素数を見つけることが興味を引いてきた。とくにメルセンヌ数と呼ばれる素数を見つけるのには便利な方法があって,コンピューターを用いて次々に大きな素数が見いだされている。特別な形の素数としてフェルマー数というのがある。
素数についての研究は古代ギリシア時代までさかのぼる。ユークリッドは《ストイケイア》の中で素数に関する次の重要な定理を述べている。(1)1以外の自然数はすべて素数の積として一意的に表される。(2)素数は無限に存在する。(2)は次のようにして示される。p1,……,pnがすべての素数であったとしよう。p1……pn+1を割る素数の一つをpとすれば,これはp1,……,pnとは明らかに異なる。これは矛盾である。しかしその後長い間この方面の研究は進展を見なかった。19世紀になってC.F.ガウスは素数の分布,すなわちどのような規則に従って素数が自然数の中に現れるかという問題を考察した。素数の分布はたいへん複雑である。素数pの次の素数はどのくらいの大きさであろうか。これについては,pの次の素数は2pよりも小さい(チェビシェフの定理)という程度のことしかいえない。実際,100!+2,100!+3,……,100!+100(!は階乗)はすべて合成数で,このように素数を含まないいくらでも長い区間を作ることができる。一方,3と5,5と7のように2だけ違う素数の対を双子素数という。2は,2と3の場合を除けば素数の間隔としては最小のものであるが,このような素数の組は無限に存在することが予想されている。このように,個々の素数は非常に不規則に分布しているのだが,ガウスはx以下の素数の個数は約log xであるという素数定理を見いだした。P.G.L.ディリクレも,aとmが互いに素な自然数とすると,等差数列,a,a+m,a+2m,……の中に素数が無限個現れるという算術級数の定理と呼ばれる結果を示した。このような素数分布に関する研究が,その後の解析的整数論の発展を促した。
執筆者:斎藤 裕
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(桂利行 東京大学大学院教授 / 2008年)
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…r=0であるとき,aはbで整除される,または割り切れるといい,aはbの倍数,bはaの約数であるという。
[素数]
1以外の正の整数pで,1と自分自身以外に正の約数をもたないものを素数という。2以外の素数は奇数なので奇素数という。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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