整数m,nの和,積を考えると,それぞれ,m+n=n+m,m×n=n×mが成り立つ。これらを,整数(環)の加法,乗法に関する交換法則という。一般に,集合Aにおける演算*が,Aの元a,bについて,a*b=b*aを満たすとき,演算*は,交換法則を満たすという。例えば,集合Bの部分集合の族において,共通部分,和集合をとる演算は,それぞれB1∩B2=B2∩B1,B1∪B2=B2∪B1だから,交換法則を満たす。また,整数環に限らず,体や環の加法は,交換法則を満たす。しかし,二次の正方行列の積,のように,群や環における乗法は,かならずしも交換法則を満たすとは限らない。そこで,乗法が交換法則を満たす群や環を,それぞれ可換群(またはアーベル群,加法群),可換環という。体では,ふつう乗法も交換法則を満たすことを仮定するが,四元数体など,乗法が交換法則を満たさない体(非可換体)もある。
執筆者:西村 純一
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算法に対する法則。たとえば3+5や5+3はともに8に等しく、3×5や5×3はともに15に等しいというように、一つの算法(゜)と元a、bについて、aとbの結合a゜bと、bとaの結合b゜aが等しいという法則で、これは交換律とか可換律などともよばれる。
この法則は、数の加法(+)、乗法(×)のほか、たとえば二つの整数の最大公約数、最小公倍数とか、二つの実数の最大・最小、二つの集合の和とか、共通部分、2点で決定される直線、2直線の共通部分、そのほかたとえば命題でもA and BとB and Aが同値という意味で交換法則が成立する。しかし、除法については、たとえば3÷2=3/2であるが2÷3=2/3であるように、また、乗法についても、二つの行列A、Bについて、一般にはAB≠BAであるように、交換法則が成立しない例も多い。
[難波完爾]
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