…哲学史をはじめて問題史的に扱った哲学史家としても著名である。彼はカントの哲学を文化価値の哲学としてとらえた。彼によれば,哲学は実証科学のように事実を明らかにしようとするものではなく,事実としての思考や行為が正しい妥当なものであるために従わなければならない基準としての普遍妥当的な価値を明らかにする学問なのであり,こうした価値として学問,道徳,芸術,宗教を可能にする真,善,美,聖の文化価値が考えられる。…
…19世紀後半以降第1次世界大戦の時期にかけて,ドイツで栄えた価値哲学は,そのころ顕著であった伝統的な価値観の崩壊現象や自然科学的唯物論,実証主義に対決しようとしていたこともあって,われわれが体験する現実の生と価値とを徹底的に対立させる二元論を根本原理とするものであった。そのため,真・善・美などの文化価値は,個別的でもあり変化するものでもある現実の生を超えていながら,しかも,それを基礎づける力を持った普遍妥当的なものであること,哲学はこうした文化価値を研究しなければならないこと,文化が実現する場所である歴史とそれを認識する歴史科学もこうした価値との関係から研究されねばならないことなどが主張された。だが,価値哲学は現実と価値とをこのように引き離したために,対立する二つのものが結びついて文化が生ずるのはなぜかの説明に窮してその無力をさらけ出し,しだいに衰えていくことになった。…
…事物の名の下にこの種のものだけを問題にする点で,この学派は観念論である。西南ドイツ学派はカントの未開拓の分野であった歴史科学や,歴史の中で生み出される文化と,文化の中に現れている文化価値を重視し,文化価値の観念論の哲学の方向にカントの観念論を徹底した。そこでは,歴史科学の目的は自然科学のように普遍的法則を認識することではなく,個々の歴史的事象の独自の特性をとらえることであるとされ,また,哲学は人間の文化とその基礎である真,善,美,聖などの文化価値を問題にしなければならないとされる。…
…ウィンデルバントやリッケルトは歴史ないし歴史的諸学が自然科学と異なる点に注目し,その結果,リッケルトやM.ウェーバー,さらにはカッシーラー等によって自然科学に対する諸学の総称として従来の精神科学の代りに用いられるようになった。リッケルトは価値から離れた自然の法則を一般化的方法により把握する自然科学に対し,文化価値を賦与された文化形態の個性化的方法による把握を文化科学と呼ぶ。現在では人文科学と社会科学との総称が文化科学である。…
※「文化価値」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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