内科学 第10版 「新生児胃破裂」の解説
新生児胃破裂(先天性胃・十二指腸疾患)
病態
幽門以下の消化管に通過障害がないのに,胃が大きく裂けたように穴が開いた状態を胃破裂とよぶ.胃破裂では通常胃大弯側に縦に大きな裂け目を生じる.病状の初期には筋層の裂け目から胃粘膜が突出するような形で発見されることもあり,先天的な胃の筋層の脆弱性や欠損が原因とも考えられている.最近では周産期管理の進歩により,胃破裂の症例は非常に少なくなっている.
臨床症状
胃破裂では,それまでに何ら問題のなかった成熟児が,生後2〜4日目に突然活気がなくなり,腹部膨満が出現するとともに,急速にショック状態に陥る.短時間に症状が進むため,破裂時には多量のミルクが胃内にあり,これが漏れ出すため高度の穿孔性腹膜炎を呈する.腹壁に浮腫や発赤が認められることが多い.出生前診断されることはまずないため,ショックに陥ってから専門施設に紹介されることが多く,低血圧,頻脈,乏尿,横隔膜挙上による多呼吸やチアノーゼなどがみられる.
診断
胃壁の穿孔により腹部単純X線写真で上腹部に気腹像が認められる.大量の腹腔内遊離ガスと腹水によりいわゆるsaddle bag signが認められるので診断は容易である.
治療
ショックの治療をまず行う.十分な細胞外液の急速輸液を行い,血圧と尿量が維持されれば,早急に開腹手術を行う.血液ガス分析でアシドーシスが進行している場合には補正を行う.手術は上腹部横切開で行い,破裂部の胃大弯側前壁を吸収糸により1層で縫合閉鎖する.その後十分に腹腔内洗浄を行う.
予後
術前の患児の状態が予後をほとんど決定する.術前に血圧が維持され,尿量が得られている症例では予後は良好であるが,重症例では現在でも予後不良である.[前田貢作]
■文献
Kimura K et al: Diamond-shaped anastomosis for duodenal atresia: an experience with 44 patients over 15 years. J Pediatr Surg, 21: 1133-1136, 1986.
日本小児外科学会学術・先進医療検討委員会:我が国の新生児外科の現況—2008年新生児外科全国集計—.日小外会誌,46: 101-114, 2010.
Tan KC, Bianchi A: Circumumbilical incision for pyloromyotomy. Br J Surg, 73: 399, 1986.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報