早稲・早生(読み)わせ

精選版 日本国語大辞典 「早稲・早生」の意味・読み・例文・類語

わせ【早稲・早生】

〘名〙 (「わさ」の変化した語)
① (早稲) 稲の品種のうちで早く成熟するもの。また、その米。わせいね。わせよね。⇔晩稲(おくて)中稲(なかて)。《季・秋》
万葉(8C後)一〇・二一一七「少女らに行相の速稲(わせ)を刈る時に成りにけらしも萩の花咲く」
② (「早生」と書くことが多い) 一般に、他の同種のものより生長が早いこと。普通より早熟なこと。また、そのもの。穀物や果物などについていう。転じて、早熟な子どものたとえ。⇔奥手(おくて)中手(なかて)
※東大寺諷誦文平安初期点(830頃)「花に約きては先(ワセに)(さ)く花中(なかてに)披く花後(おくてに)披く花有り」
※今弁慶(1891)〈江見水蔭発端「そろそろと歩む事、あまりの早稲(ワセ)なりと、人々舌を巻きて驚きし由」
[語誌]「万葉集」では仮名書き例は「可豆思加和世」〔三三八六〕のみで、他は「速稲」「早稲」をワセと訓み、「早田」「早芽子」「早穂」をワサダ、ワサハギ、ワサホと訓んでいる。なお「正倉院文書」に見える「和左々酒」もこれらと関係があり、複合語の一要素となっている。「わさごめ」「わさなへ」などの語も後世見られ、「わせ」「わさ」のいずれの形を原形とするかは決しがたいが、単独形としては「わせ」であろう。

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