日本大百科全書(ニッポニカ) 「明日の幸福」の意味・わかりやすい解説
明日の幸福
あしたのこうふく
中野実作の戯曲。3幕。1954年(昭和29)11月明治座で、新派の花柳(はなやぎ)章太郎、水谷八重子(やえこ)、伊志井寛(いしいかん)、小堀誠らにより初演。代議士松崎家の家宝の埴輪(はにわ)が破損したことをめぐり、新婚の嫁、妻、祖母の3代にわたる「過失」がしだいに明らかになってくる。その過程で、家というもののなかでの女の座がどんなものか、その姿がつづられる。最後に3代の女がこの埴輪を壊すことで、埴輪に象徴された古いものへの決別と明日の幸福を暗示する。1954年度の文部省芸術祭賞、毎日演劇賞を受賞した。謎(なぞ)を秘めた巧みな劇の展開と、喜劇的なタッチで好評を得て、新派をはじめ大衆演劇の好演目として上演を重ねている。映画化もされた。
[水落 潔]
『日本演劇協会編『年刊戯曲 2』(1955・東京宝文館)』