星細胞腫、退形成性星細胞腫、膠芽腫

内科学 第10版 の解説

星細胞腫、退形成性星細胞腫、膠芽腫(脳腫瘍各論)

(1)星細胞腫(astrocytoma),退形成性星細胞腫(ana­plastic astrocytoma),膠芽腫(glioblastoma)
 3者を合わせると,全脳腫瘍の約25%を占める.組織学的にはいずれも星細胞類似の腫瘍細胞からなる.星細胞腫,退形成性星細胞腫,膠芽腫の順に組織学的な悪性度は高くなるが,臨床経過もこれに準じ膠芽腫は脳腫瘍のなかで最も予後不良なものの1つである.膠芽腫のなかには最初から(de novo)膠芽腫として発病するものと,もともとは星細胞腫や退形成性星細胞腫であった腫瘍が,膠芽腫として再発するものとがある.好発部位・性差・好発年齢 いずれの腫瘍も大脳半球に好発する.男性にやや多い傾向にあり,好発年齢のピークは星細胞腫ではおおよそ30~40歳代,退形成性星細胞腫では40~50歳代,膠芽腫では50~60歳代となるが,脳幹小脳の星細胞腫に関しては小児発症例も決してまれではない.
臨床症状
 痙攣発作や腫瘍発生部位に応じた脳局所症状をみるが,膠芽腫では腫瘍周辺の脳浮腫が著明なため,しばしば頭蓋内圧亢進症状を伴う.
診断
 星細胞腫はCT上低吸収域,T1強調 MRIでは低信号域,T2強調MRIでは高信号域として描出されるが,基本的には造影剤による増強効果を受けない(図15-14-1A).これに対して,退形成性星細胞腫では腫瘍は部分的であっても造影され(図15-14-1B),さらに膠芽腫になると腫瘍内壊死巣を取り囲むリング状の増強効果をみるようになる(図15-14-1C).
治療・予後
 神経機能を温存しつつ可及的に腫瘍を摘出し,術後に放射線治療を行う.手術と放射線治療に加え,退形成性星細胞腫や膠芽腫に対しては,ニトロソウレア系薬物を中心とする多剤併用の化学療法を行う場合もあるが,最近では第2世代のアルキル化剤であるテモゾラミド(temozolomide:TMZ)が広く用いられている.TMZは経口摂取でき,副作用の発現頻度,程度もほかの抗腫瘍薬剤と比較して一般に軽度であるという利点がある.現在では世界的にTMZと放射線療法の併用療法が退形成性星細胞腫や膠芽腫に対する治療の主流になりつつある.このような治療を行っても,膠芽腫の2年生存率は30%以下であり,患者が5年以上生存することはまれである.退形成性星細胞腫の5年生存率は50%以下,また星細胞腫であっても5年生存率は50~80%とされており,完治を期待することは難しい腫瘍である.[新井 一]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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