暗れる（読み）くれる

精選版 日本国語大辞典

く・れる【暗・眩】

1. 〘 自動詞 ラ行下一段活用 〙
   [ 文語形 ]く・る 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙 暗くなるの意。
2. ① （悲しみ、怒りなどの激しい感情のために）目の前がまっくらになる。目がくらむ。
   1. [初出の実例]「いかにしなし奉り給はんとするにかあらむと思ふに、目くるる心地して」(出典：落窪物語（１０Ｃ後）一)
3. ② 涙などで目がくもって見えなくなる。目がかすむ。多く「涙にくれる」の形で用いられる。
   1. [初出の実例]「雲のうへも涙にくるる秋の月いかですむらん浅茅生(あさぢふ)の宿」(出典：源氏物語（1001‐14頃）桐壺)
4. ③ 異常な条件のもとに置かれたために、理性的な判断を下すことができなくなる。
   1. (イ) 悲しみや、自己の能力をこえた事態のために理性を奪われ、いたずらに思い迷う。悲しみのために理性を失う。心がくらむ。思いまどう。→くれまどう。
      1. [初出の実例]「况(いはんや)是を限り、只今計りの御名残り、行末くれたる御心、せんかたなくぞ思し召す」(出典：保元物語（1220頃か）下)
   2. (ロ) ( 「目がくれる」の形で ) 欲望や利益のために心を奪われて、道理にはずれた判断を下す。欲や金のために目がくらむ。
      1. [初出の実例]「タカラニ メガ cururu(クルル)」(出典：日葡辞書（1603‐04）)
5. ④ 楽しみや希望がまったく奪われる。あじけなく灰色である。世の中が暗く、乱れる。→かきくれる・くれふたがる

出典　精選版 日本国語大辞典