一般的には、動機の実現が意識的、無意識的に抑制されている状態をいう。動機の有無は、刑罰上重要な意味をもち、意図的に行われた行為は厳しく罰せられる。しかし、「隣に住んでいる美人の奥さんと、肉体的な関係をもちたい」といった欲望は、実行すれば不倫な関係になるので道徳的に抑制されるものである。多くの宗教では、そうした欲望をもつことそのことが、罪深いことになると教えている。通俗的な例だが、「抑制された状態」の意味が理解できるだろう。したがって、欲望と願望とは同義語とする学者もある。
心理学の同種の概念に、フラストレーションfrustration(欲求阻止、欲求不満)がある。これは、目標行動がなんらかの条件によって阻止されていることを意味する。フラストレーションの結果、緊張を解消するための攻撃行動などがみられる。これは、フロイトによって使用された異常行動の解釈仮説であるが、欲望と状態が類似している。欲望は理性主義者によって、卑しむべき低級のものとされたが、サルトルは、欲望は自分に欠けているものを求め、欠けていない存在になろうとすることだという積極的意味を与えている。
[本明 寛]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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