日本大百科全書(ニッポニカ) 「最後の一句」の意味・わかりやすい解説 最後の一句さいごのいっく 森鴎外(おうがい)の短編小説。1915年(大正4)10月『中央公論』に発表。歴史小説の一つ。文久(ぶんきゅう)3年(1863)、大阪の船乗業桂屋(かつらや)太郎兵衛が罪を得て死罪になる前日、16歳になるその長女いちが、弟妹とともに身代りになりたいと申し出た。いちは、奉行所の糾問にみごとに応じたうえ、最後に、「お上の事には間違はございますまいから」と言い足し、そのことばは役人たちの胸を刺した。そして、結局、太郎兵衛は死罪を免れた。このいちの最後の一句には、鴎外自身の官権への批判意識が込められている。[磯貝英夫]『『山椒大夫・高瀬舟 他四編』(岩波文庫)』 出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例