精選版 日本国語大辞典 「山椒大夫」の意味・読み・例文・類語
さんしょう‐だゆうサンセウダイフ【山椒大夫・三荘シャウ大夫・山荘シャウ大夫】
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- [ 一 ] ( 「大夫」は長者の意。「山椒」「三荘」については大夫が山椒を売って富を得たからとも、三つの山荘を持っていたからともいう ) 丹後国(京都府)由良(ゆら)の長者の名。
- [初出の実例]「御兄弟見捨てとちへ消る雪〈素玄〉 さんしゃう太夫が袖の山風〈武仙〉」(出典:俳諧・天満千句(1676)九)
- [ 二 ] 長者伝説の一つ。栄華を誇っていた[ 一 ]の長者が没落する話。陸奥国(青森県)の太守岩城判官正氏が、他人の虚言によって無実の罪をきせられ、筑紫国(九州)に流されたので、その子安寿姫と厨子王が母と共に父を尋ねて越後国(新潟県)直江津まで来たが、人買いにだまされ、母は佐渡へ、安寿姫と厨子王は山椒大夫に売られてしまった。山椒大夫は強欲非道な男で、他の奴婢同様二人を酷使した。そのため安寿姫は厨子王を逃がし、自分は拷問にあって殺されてしまった。後、厨子王は都まで行き、朝廷に請うて、丹後、越後、佐渡を賜わり、再び、由良に行って山椒大夫をこらしめて仇をむくいたという内容。「さんしょう」には種々の字が当てられるが、柳田国男は、中世の被差別民である散所民をこの物語の語り手とし、散所の太夫と説いた。
- [ 三 ] [ 一 ]の伝説を脚色した説経浄瑠璃。五説経の一つに数えられる程流行し、江戸初期に数種の正本が出た。
- [ 四 ] [ 一 ]の伝説を脚色した浄瑠璃。文彌節にも「山枡太夫」、角太夫節に「都志王丸」があったが、紀海音作「山枡太夫恋慕湊(れんぼのみなと)」、竹田出雲作「山荘太夫五人嬢(むすめ)」、近松半二ら作「由良湊千軒長者(ゆらのみなとせんげんちょうじゃ)」などが名高い。
- [ 五 ] ( 山椒大夫 ) 小説。森鴎外作。大正四年(一九一五)発表。説経節、浄瑠璃の形で伝承されていた山椒大夫伝説に基づく。安寿と厨子王の姉弟愛と、守り本尊による霊験を情感豊かに描く。
- [ 一 ] ( 「大夫」は長者の意。「山椒」「三荘」については大夫が山椒を売って富を得たからとも、三つの山荘を持っていたからともいう ) 丹後国(京都府)由良(ゆら)の長者の名。
- [ 2 ] ( [ 一 ][ 一 ]が奴婢を酷使したところから ) 人遣いの荒い人。
- [初出の実例]「やれ三介の、やれおさんの、やれ長松のと、やすくされるは、その身その身の拙き果報故と思ひ、いかなる三庄大夫も憐れみ使ふべき事なり」(出典:黄表紙・金々先生造化夢(1794))