化学辞典 第2版 「有機塩素系化合物」の解説
有機塩素系化合物
ユウキエンソケイカゴウブツ
organic chlorine compound
分子内に炭素と塩素の共有結合をもつ物質をいう.ほとんどの化合物は産業活動に伴い,化学原料,冷媒,溶剤,麻酔剤,消化剤,熱媒体,殺虫剤,農薬,合成繊維,合成樹脂などの製造を目的として人工的に合成されたものである.冷媒,発泡剤,洗浄剤として使用されたフロンによるオゾン層破壊への関与,溶剤として使用されたトリクロロエテンやトリハロメタンによる地下水の汚染や地球温暖化への影響,1950年代からマラリアや発疹チフス予防の殺虫剤として使用されたDDTや農業用殺虫剤BHC,熱媒体,絶縁オイルPCBなどは生物濃縮による生態系への重大な影響が指摘されている.さらにごみの焼却やベトナム戦争の枯葉剤(エージェントオレンジ)への混入で問題となった強力な毒性をもつダイオキシンなどがある.ほとんどすべての有機塩素系化合物に,中枢神経異常や筋肉麻ひなどの毒性が指摘され,化学的に安定なものが多く分解されにくいため,自然界に長く蓄積することから,地球規模での汚染とともに,残留性有機汚染物質(persistent organic pollutants,POPs)として,地球環境,生態系の影響が懸念されている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報