翻訳|refrigerant
圧縮(高圧・高温)→冷却・液化(高温域での環境への放熱)→膨張(低圧・低温)→気化(低温域での吸熱)の過程を繰り返して、低温を得る熱力学過程を冷凍サイクルといい、その媒体となる物質を冷媒とよぶ。通常の冷凍サイクルでは、高温域での放熱は常温下の冷却水はまた大気へ、目的低温域での吸熱は10~零下40℃で行われる。家庭用の冷蔵庫や冷房装置もその例である。零下50℃以下の低温を得るためには、真空下で冷媒を気化させる方法(真空蒸発法)や、第一の冷媒の気化温度域で液化し、さらに低温域で気化する第二の冷媒と組み合わせる方法(二元冷凍サイクル)などが用いられている。
冷媒は、この温度域で安定な物質であり、作動圧力はできるだけ常圧に近く、装置材料を腐食させず、引火爆発性や毒性のない物質であることが望ましい。以前にはアンモニアや二酸化炭素などが用いられたが、のちにフロン(フッ素を含むハロゲン化メタンまたはエタン)が多く用いられるようになった。しかし、フロンはオゾン層を破壊する物質であるとして、その使用が問題となった。
[河村祐治]
フロンのCFC(クロロフルオロカーボン)は、冷媒として広く用いられたが、オゾン層を破壊する物質であることが判明した。そのため、CFCのかわりに冷媒に使用されたのが、代替フロンのHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)とHFC(ハイドロフルオロカーボン)であった。しかし代替フロンは、オゾン層を破壊しないものの、二酸化炭素の数千倍も地球温暖化に影響することがわかった。そこで、オゾン層保護のためのモントリオール議定書によって、先進国では1995年末でCFCの生産を全廃、HCFCは2020年で生産を全廃することになった。また、HFCも京都議定書で削減の対象とされている。このようにフロン規制が強化された結果、冷媒のノンフロン化技術の開発が進められていて、二酸化炭素や炭化水素などを用いた自然冷媒がふたたび注目をされている。
[編集部]
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冷凍機や熱ポンプにおいて,低温の物体から高温の物体に熱を運ぶ作動流体を冷媒という。蒸気圧縮式冷凍機では,冷媒は熱を与える(あるいは受け取る)際に凝縮(あるいは蒸発)するので,蒸発圧力があまり低くなく,かつ凝縮圧力があまり高くない物質が適している。また蒸発潜熱が大きくて伝熱性能がよく,圧縮仕事の小さいこと,安定で毒性のないことが望まれる。吸収冷凍機では,冷媒を圧縮するのに,冷媒蒸気を吸収剤に吸収させ,その溶液を昇圧した後に加熱する方法がとられ,冷媒と吸収剤の組合せとしては,水と臭化リチウム,アンモニアと水の組合せなどが実用化されている。蒸気噴射式冷凍機では水,空気冷凍機では空気が冷媒となる。
→冷凍機
執筆者:斎藤 孝基
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…現在冷凍機の利用は製氷,食品冷凍,冷房の分野にとどまらず,気体の液化,温湿度の調節,医学における低温利用など広い分野で利用されている。
[原理]
冷凍作用は,低温物体から奪った熱をより高い温度の周囲に捨てることができてはじめて可能となり,この熱の授受のために用いられる作動流体を冷媒と呼ぶ。ところで,互いに接触する物体や流体の間では,熱は高温側から低温側に流れるのがつねであり,これは冷媒における熱の授受においてもあてはまることである。…
※「冷媒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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