フロン(読み)ふろん(英語表記)flon

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フロン」の意味・わかりやすい解説

フロン
ふろん
flon

塩化フッ化炭化水素総称で日本における慣用名。正式名称はフルオロカーボンフロンは下記の3種に大別される。

(1)クロロフルオロカーボンCFC:Chloro Fluoro Carbon) 塩素フッ素、炭素からなる。化学的に安定なため成層圏にまで達し、紫外線によって塩素原子に分解され、これがオゾン層を破壊する。CFC-11、CFC-12、CFC-113、CFC-114、CFC-115の5種がある。

(2)ハイドロクロロフルオロカーボンHCFC:Hydro Chloro Fluoro Carbon) 水素、塩素、フッ素、炭素からなる。塩素を含むが水素も含むため成層圏に達するまでに分解する可能性が高く、CFCに比べオゾン層破壊の性質は弱いとされている。HCFC-22、HCFC-123などがある。

(3)ハイドロフルオロカーボンHFC:Hydro Fluoro Carbon) 水素、フッ素、炭素からなる。塩素を含んでいないためオゾン層は破壊しないが、高い温室効果を有し、地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)も大きい。代替フロンとよばれる。HFC-134aなどがある。

 これまでCFC-12とHCFC-22は電気冷蔵庫、ルームエアコン、CFC-113は大容量冷房の冷媒に用いられていたが、これらのフロンは使用後大気中に放出されるとオゾン層を破壊するといわれ、1987年にその生産・消費量を規制する「モントリオール議定書」が採択され、段階的削減が決定した。同議定書に基づき、フロンのなかでもオゾン層への破壊力の強い特定フロンCFCについては先進国では1996年までに使用は全廃され、開発途上国でも2010年までに全廃されることになった。また、HCFCは先進国で2030年、開発途上国で2040年までに全廃されることが規定された。

 日本でもこの議定書に調印、1988年(昭和63)には「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(オゾン層保護法)」(昭和63年法律第53号)が制定され、フロン規制が本格化した。また、2001年(平成13)に「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収・破壊法)」(平成13年法律第64号)が公布され、対象となるフロン類が冷媒として使用されているカーエアコン搭載の自動車や業務用冷凍空調機器などを廃棄する場合には、同法に基づき、フロン類の適正な回収と破壊処理の実施等が義務づけられた。さらに2013年には同法が改正(法律名も「フロン排出抑制法(正式名称は「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」)」に変更)され、これまでのフロン類の回収・破壊に加え、フロン類の製造から廃棄までのライフサイクル全体にわたる包括的な対策がとられるようになった。

 なお、フロンは自然界には存在しない人工物質で、製造法としてはクロロホルム、四塩化炭素、六塩化エタンなどをハロゲン化アンチモンなどの触媒でフッ化水素と反応させてつくる。


 化学的に安定で、金属を腐食させず、無色無臭、不爆発、不燃性で毒性が低いため、噴霧剤、消火剤、溶媒、液体無水硫酸の希釈剤、ウレタンフォームの発泡剤などに用いられ、フッ素樹脂の原料にもなった。

[加治有恒・編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フロン」の意味・わかりやすい解説

フロン

炭化水素の水素原子をフッ素原子で置換した化合物の日本における総称。フルオロカーボン fluorocarbon。結合力が強いため化学的・熱的に安定で,電気的特性,耐薬品性に優れ,多くの分野で使用されてきた。炭素数,水素の置換種(フッ素,塩素,臭素)およびその数により多くの種類がある。特に特定フロン冷媒,噴霧剤に多く用いられていたが,1970年代に成層圏オゾンを分解し環境に悪影響を与えることが指摘され,1987年にはオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書で使用が禁止されたため,代替品(→代替フロン)に移行された。フロンはほかに界面活性剤潤滑剤などに用いられる。また工業用部品や調理器具などに利用されるフッ素樹脂の原料でもある。

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