フロン(読み)ふろん(その他表記)flon

デジタル大辞泉 「フロン」の意味・読み・例文・類語

フロン

フルオロカーボンの日本における慣用名。メタンエタンなどの炭化水素水素を、弗素ふっそ塩素置換した化合物の総称。無色・無臭・無毒・不燃性で化学的に安定しており、電気冷蔵庫・クーラーの冷媒やスプレー、ウレタンフォーム発泡剤半導体の洗浄剤などに使用。フレオン(商標名)。
[補説]フロンの一種であるクロロフルオロカーボンCFC)は、大気中に放出されると長い時間をかけて成層圏に達し、そこで紫外線によって分解されてオゾン層を破壊する。そのため、使用が規制され代替フロンが登場したが、こちらも二酸化炭素より温室効果が高いことがわかり、規制と全廃が進められている。→シー‐エフ‐シー(CFC)エッチ‐シー‐エフ‐シー(HCFC)エッチ‐エフ‐シー(HFC)

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精選版 日本国語大辞典 「フロン」の意味・読み・例文・類語

フロン

  1. 〘 名詞 〙 ( 洋語flon ) 塩素と弗素のついた低級炭化水素化合物の総称。スプレー用、冷房や冷蔵庫などの冷媒用として広く利用されたが、オゾン層破壊の原因となるため、一九九五年末に生産が打ち切られた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フロン」の意味・わかりやすい解説

フロン
ふろん
flon

塩化フッ化炭化水素の総称で日本における慣用名。正式名称はフルオロカーボン。フロンは下記の3種に大別される。

(1)クロロフルオロカーボン(CFC:Chloro Fluoro Carbon) 塩素、フッ素、炭素からなる。化学的に安定なため成層圏にまで達し、紫外線によって塩素原子に分解され、これがオゾン層を破壊する。CFC-11、CFC-12、CFC-113、CFC-114、CFC-115の5種がある。

(2)ハイドロクロロフルオロカーボンHCFC:Hydro Chloro Fluoro Carbon) 水素、塩素、フッ素、炭素からなる。塩素を含むが水素も含むため成層圏に達するまでに分解する可能性が高く、CFCに比べオゾン層破壊の性質は弱いとされている。HCFC-22、HCFC-123などがある。

(3)ハイドロフルオロカーボンHFC:Hydro Fluoro Carbon) 水素、フッ素、炭素からなる。塩素を含んでいないためオゾン層は破壊しないが、高い温室効果を有し、地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)も大きい。代替フロンとよばれる。HFC-134aなどがある。

 これまでCFC-12とHCFC-22は電気冷蔵庫、ルームエアコン、CFC-113は大容量冷房の冷媒に用いられていたが、これらのフロンは使用後大気中に放出されるとオゾン層を破壊するといわれ、1987年にその生産・消費量を規制する「モントリオール議定書」が採択され、段階的削減が決定した。同議定書に基づき、フロンのなかでもオゾン層への破壊力の強い特定フロンCFCについては先進国では1996年までに使用は全廃され、開発途上国でも2010年までに全廃されることになった。また、HCFCは先進国で2030年、開発途上国で2040年までに全廃されることが規定された。

 日本でもこの議定書に調印、1988年(昭和63)には「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(オゾン層保護法)」(昭和63年法律第53号)が制定され、フロン規制が本格化した。また、2001年(平成13)に「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収・破壊法)」(平成13年法律第64号)が公布され、対象となるフロン類が冷媒として使用されているカーエアコン搭載の自動車や業務用冷凍空調機器などを廃棄する場合には、同法に基づき、フロン類の適正な回収と破壊処理の実施等が義務づけられた。さらに2013年には同法が改正(法律名も「フロン排出抑制法(正式名称は「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」)」に変更)され、これまでのフロン類の回収・破壊に加え、フロン類の製造から廃棄までのライフサイクル全体にわたる包括的な対策がとられるようになった。

 なお、フロンは自然界には存在しない人工物質で、製造法としてはクロロホルム四塩化炭素、六塩化エタンなどをハロゲン化アンチモンなどの触媒でフッ化水素と反応させてつくる。


 化学的に安定で、金属を腐食させず、無色無臭、不爆発、不燃性で毒性が低いため、噴霧剤、消火剤、溶媒、液体無水硫酸の希釈剤、ウレタンフォームの発泡剤などに用いられ、フッ素樹脂の原料にもなった。

[加治有恒・編集部]

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百科事典マイペディア 「フロン」の意味・わかりやすい解説

フロン

冷媒,溶剤,噴霧剤などに使われるメタン,エタンなどのフッ素置換体の総称で,日本における慣用名。最初米国デュポン社からフレオンの商品名で製品化された。多くの場合フッ素以外に塩素を含む。国際的に化学構造によりコードナンバーが決められ,フロン-11 CCl3F(沸点23.8℃),-12 CCl2F2(沸点−29.8℃),-22 CHClF2(沸点−40.8℃),-113 CCl2FCClF2(沸点47.6℃)など多くの製品がある。これらのナンバーの1位はFの数,10位はHの数+1,100位はCの数−1を表す。一般にフロンは不燃性安定で極めて分解しにくい。 近年需要量の急増に伴い,放散されたフロンが成層圏まで拡散してオゾン層を破壊し,地上に到達する紫外線を増大させる結果,人間の皮膚癌(がん)の増加,生態系の破壊などの公害発生が世界的に大きな社会問題となっている。このため噴霧用フロンの使用禁止や,各種フロンの使用制限,回収再利用などが強化され,1987年にはフロン生産量の半減をもりこんだ〈モントリオール議定書〉が制定され,その後1992年には議定書締約国会議で先進各国は,特定フロン5種類(フロン-11,-12,-113,-114,-115)の全廃を当初の2000年から前倒しで1995年末までとすることで合意し,1996年以降は代替フロンのみの生産となった。代替フロンには塩素を含まないハイドロフルオロカーボン(HFC)とハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)があるが,1999年の北京会議では規制を強化することで合意,代替フロンも2020年の原則廃止が決まっている。→オゾン層破壊フロン代替材料
→関連項目オゾン層保護条約産業公害四塩化炭素自動車リサイクル法西暦2000年の地球大気汚染大気浄化法地球温暖化デオドラント化粧品有機塩素化合物冷媒

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知恵蔵 「フロン」の解説

フロン

フロンは、フルオロカーボン類の日本で命名した総称名であり、CFC、HCFC、HFC、PFCなど種々の化合物を包括する。クロロフルオロカーボン(CFC)は、天然には存在しない人工の化合物。フレオンともいうが、デュポン社の商品名である。CFCは、メタン分子やエタン分子の水素(H)を塩素(Cl)とフッ素(F)で置換した化合物。不燃、無毒、液化が容易、しかも不活性などの性質を持ち、冷蔵庫、クーラーなどの冷媒、半導体を洗浄する溶媒、また噴霧剤として世界中で使用され、1985年の1年間で100万t余り生産されたという報告がある。74年ごろから、成層圏に達したCFCが紫外光により分解して生じた、塩素原子が触媒となってオゾン層を破壊し、皮膚がんの発症が高まることが指摘された。そこで、オゾン層破壊を防止するため、85年のウィーン条約、87年の地球規模での取り組みを定めたオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書の制定により、指定されたCFC(特定フロン)の国際規制が始まった。その結果、95年には先進国でフロンの生産が中止され、代わりに登場したのが代替フロン。主な代替フロンとしてハイドロフルオロカーボン(HFC)やハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)が製造され、前者は塩素を含まずHとFとC(炭素)からできている化合物で、後者はHとFとClとC(炭素)からできている化合物。特定フロンには様々な種類があり、CFC-11やCFC-113などコード名で区別している。11や113のコードは、一の位の数がFの個数、十の位はHの数(この場合は0)に1を足した数、そして百の位は炭素の総数から1を引いた数を表している。従って、CFC-11はCCl(3)F, CFC-113はCCl(2)FCClF(2)になる。HCFCのオゾン層破壊能はCFC類のそれよりも一般に小さく、HFC類はオゾン層を全く破壊しないが、地球温暖化ガスとして作用する。例えば、二酸化炭素の約5000倍の温室効果を及ぼすHCFCもある。97年12月に京都で開催されたCOP3(3rd session, Conference of the Parties to the UNFCCC、地球温暖化防止京都会議)では、HFC、ペルフルオロカーボン(PFC)や六フッ化硫黄〈SF(6)〉は二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素と共に削減が決まったが、特定フロンとHCFCは対象から外された。日本では、2001年6月にカーエアコン、業務用冷凍・空調機器用フロンの回収・破壊を義務付けたフロン回収・破壊法が成立した。また、05年2月に京都議定書が発効し、日本は08年から5年間で90年の温室効果ガス排出量の6%を削減する義務が課せられた。

(市村禎二郎 東京工業大学教授 / 2008年)

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改訂新版 世界大百科事典 「フロン」の意味・わかりやすい解説

フロン
Flon

炭化水素のフルオロ置換体であるフルオロカーボン類fluorocarbonに対する日本でのみ用いられている総称名。フレオンFreoon(デュポン社の商品名)と呼ばれることもある。フロンには,フッ素と塩素を置換基にもつクロロフルオロカーボン(CFC),フッ素,水素,塩素を含むヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC),フッ素,水素を含むヒドロフルオロカーボン(HFC),すべての水素をフッ素で置換したペルフルオロカーボン(PFC),などがある。しかしながら,フロンはしばしばCFCのみを指す言葉として誤って用いられているので注意を要する。また,モントリオール条約で規制されているCFC類は特定フロン,未だ規制されていないHCFC,HFCなどは代替フロンと呼ばれることが多い。これらのフロン類の製法はきわめて多様であるが,例えばCFCやHCFCなどは四塩化炭素,クロロホルム,テトラクロロエチレンなどの炭化水素のクロロ置換体に,触媒の存在下でフッ化水素(場合によってはフッ化水素と塩素)を作用させる方法などでつくられる。おもなものの組成および物性を表に示す。フロンは一般に,無色無臭の気体または液体で,化学的,熱的に安定,腐食性・毒性が低く,引火性がない。冷房・冷蔵・冷凍用の冷媒,洗浄剤・溶剤・消化剤,ウレタン・ポリスチレンフォームなどの発泡剤,フッ素樹脂の原料として用いられている。なお,塩素を含むフロン類CFC,HCFCは,使用後大気中に放出されると,やがて成層圏に流れ,太陽紫外線によって分解されて生ずる塩素原子がオゾン層を破壊する。モントリオール条約に基づいて,日本では1996年以来,オゾン層破壊係数の大きなCFCのいくつか(特定フロン)は製造が禁止されている。また,代替フロンとして使用が拡大しているHCFC(オゾン層破壊係数が比較的小さい)やHFC(オゾン層を破壊しない)などは,地球温暖化係数が二酸化炭素に比べてきわめて大きいので,その使用は抑制すべきとの指摘もある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フロン」の意味・わかりやすい解説

フロン

炭化水素の水素原子をフッ素原子で置換した化合物の日本における総称。フルオロカーボン fluorocarbon。結合力が強いため化学的・熱的に安定で,電気的特性,耐薬品性に優れ,多くの分野で使用されてきた。炭素数,水素の置換種(フッ素,塩素,臭素)およびその数により多くの種類がある。特に特定フロン冷媒,噴霧剤に多く用いられていたが,1970年代に成層圏オゾンを分解し環境に悪影響を与えることが指摘され,1987年にはオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書で使用が禁止されたため,代替品(→代替フロン)に移行された。フロンはほかに界面活性剤潤滑剤などに用いられる。また工業用部品や調理器具などに利用されるフッ素樹脂の原料でもある。

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化学辞典 第2版 「フロン」の解説

フロン
フロン
flon

冷媒,溶媒,噴霧剤などに使用される低沸点のメタン,エタンなどのフッ素置換体の総称.わが国における慣用名.オゾン層の破壊が憂慮され,代替品の開発が進められている.[別用語参照]クロロフルオロカーボンクロロフルオロメタン

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「フロン」の解説

フロン

 クロロフルオロカーボン,クロロフルオロ炭素の慣用名.フッ化炭化水素で,冷媒として使われるものの総称.地球環境に大きな影響を及ぼすことから,使用しないようになっている.

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世界大百科事典(旧版)内のフロンの言及

【スフィンクス】より

…古期の〈ピラミッド・テキスト〉では2頭のライオンをルゥティと読んでスフィンクスを示していたのに対し,中期の文書(たとえば《シヌの物語》)では,シェセプ・アンク(魂の像)と呼んでいる(この語からギリシア語スフィンクスsphinxが出たという説もある)。また新王国時代には,有翼のスフィンクスがフルナ,フロン(セム系の太陽神を表す言葉)などと呼ばれているが,これはメソポタミアから逆輸入されたものである。 メソポタミアのスフィンクス彫像の代表としては,北イラクのニムルド(アッシリア王宮址)の井戸の底から見つけ出された象牙製のものがある。…

※「フロン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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