有責配偶者(読み)ゆうせきはいぐうしゃ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「有責配偶者」の意味・わかりやすい解説

有責配偶者
ゆうせきはいぐうしゃ

婚姻破綻につき,もっぱらまたは主として責任のある配偶者をいう。日本の民法破綻主義のたてまえから「婚姻を継続しがたい重大な事由」があることを離婚原因と認めているので,みずからの有責行為によって婚姻を破綻させた者からの離婚請求自体禁じられているわけではない。しかし,第2次世界大戦後,判例は一貫してこのような配偶者を「有責配偶者」と呼び,有責配偶者からの離婚請求を棄却してきた。消極的破綻主義といわれるゆえんである。学説は当初現実的観点からやむをえないとし,その法的根拠を権利濫用,クリーンハンドの原則信義則などに求めて判例を支持していたが,他方,破綻した婚姻を法的に維持することの反倫理性や反人間性あるいは国家的利益の不存在,または自由意思に基づく協議離婚を認めていることとの不均衡,さらには欧米諸国の積極的破綻主義離婚法への潮流を背景として,徐々に批判が強まってきた。最高裁判所はついに昭和 62年9月2日大法廷判決によって従来の判例を変更し,長期間の別居があり未成熟の子が存在せず特段の事情も認められない場合には,有責配偶者からの離婚請求であっても離婚は認められるとした。さらに 1994年7月提出された民法改正要綱試案では,5年以上の別居で離婚請求を認めるなど,破綻主義の明確化がうたわれている。

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知恵蔵 「有責配偶者」の解説

有責配偶者

自ら離婚原因を作って婚姻関係を破綻させた者。有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められない。しかし、最高裁大法廷は1987年9月2日、厳しい条件付きながら、有責配偶者からの離婚請求を認める判決をした。条件は、別居期間が長期で(この場合35年余)、未成熟の子供がなく、相手方が離婚されても精神的・社会的・経済的にも困る状態にないなど。その後も判例が多く出ているが、現在のところ、何年別居したら認められるということではない。

(吉岡寛 弁護士 / 2007年)

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