大学事典 「李登輝事件」の解説
李登輝事件
りとうきじけん
2004年12月,中華民国元総統の李登輝が,母校の京都大学訪問を希望し,大学当局に訪問の意を伝えていたにもかかわらず,訪問当日,京都大学は李を警護する警察官の大学構内への立入りを認めることは大学の自治に反することを理由に,警察官の入構を拒んだ。警護なしでの身の安全を考慮した李元総統は,母校訪問を断念するという事態が生じた。この背景には,中台の緊張関係の中で,中国政府が京都大学に対して李氏の訪問を認めるなと事前に圧力をかけてきたことがあったとも指摘されている。大学が大学自治を楯に警察官の入構を拒むという論理を持ち出すことは,東大ポポロ事件の最高裁判決(1963年)以降,とくに1968~69年の大学紛争以降ほとんど見られなかったことであり,大学自治論への先祖返りとして逆に世間の注目を集めた。
著者: 斉藤泰雄
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報