警察官(読み)ケイサツカン

デジタル大辞泉 「警察官」の意味・読み・例文・類語

けいさつ‐かん〔‐クワン〕【警察官】

警察の責務を遂行する国家公務員および地方公務員警視総監警視監警視長警視正警視警部警部補巡査部長巡査の9階級に分かれる。
[補説]警視正以上が国家公務員で、任免は国家公安委員会都道府県公安委員会の同意を得て行う。警察機関で最高位の警察庁長官は、警察法に定められた階級から除かれている。
[類語]警官お巡りさんお巡り警部警視刑事巡査婦人警察官駐在でか

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精選版 日本国語大辞典 「警察官」の意味・読み・例文・類語

けいさつ‐かん‥クヮン【警察官】

  1. 〘 名詞 〙 国民の生命、身体および財産を保護するため、定められた権限を行使して犯罪の予防、捜査、逮捕状の執行などにあたる公務員。警視総監または道府県警察本部長、警視監、警視長、警視正、警視、警部、警部補、巡査部長および巡査の九階級がある。警察官吏。警察吏。
    1. [初出の実例]「士人の犯罪を取扱ふには経験ある警察官と知られたり」(出典:雪中梅(1886)〈末広鉄腸〉上)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「警察官」の意味・わかりやすい解説

警察官
けいさつかん

警察法(昭和29年法律162号)の定める警察の責務を遂行するために置かれた一般職の国家公務員または地方公務員。

[小松 進]

責務・身分

その責務は、「個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ること」と規定されている(同法2条)。旧警察法(昭和22年法律196号)は、国家地方警察と市町村自治体警察の二本立ての警察制度を採用し、前者には国家公務員である警察官を置き、後者には地方公務員である警察吏員を置くこととしていた。これに対して、現行警察法は、国家地方警察と市町村自治体警察を一元化し、都道府県を単位として、都道府県警察を置くこととし、これらの都道府県の警察機関をその所掌事務の範囲内で指揮監督する国の警察機関として、警察庁を置いている。警察庁は内閣総理大臣の下に置かれる国家公安委員会の管理に服し(同法5条)、都道府県警察は都道府県知事の下に置かれる都道府県公安委員会の管理に服するものとされている(同法38条)。なお、警察吏員の名称はなくなり、警察官に統一された。

[小松 進]

警察職員の種類

警察職員は、警察庁にあっては、警察官、皇宮護衛官、事務官、技官等で構成され、都道府県警察にあっては、警察官、事務吏員、技術吏員等で構成される。このうち、いわゆる警察権を行使するのが警察官で、他の職種の警察職員と明確に区分されている。

[小松 進]

警察官の職務

警察の職務は、警察の作用・機能に応じて多様である。大まかにいえば、犯罪の捜査、被疑者の逮捕などを行う司法警察(刑事警察)、社会の安寧秩序の保持を目的とする保安警察、および衛生・交通・産業などさまざまな分野における行政作用に関連して行われる行政警察がある。これらの国の警察作用を担う職員の中心が警察官であるが、これ以外にも、特別法に基づいて警察作用にかかわる者もいる。たとえば、犯罪捜査にあたるのは警察官――刑事(巡査)や部長刑事(巡査部長)――であるが、これ以外にも鉄道、麻薬など一定の分野について鉄道警察隊、麻薬取締官など警察作用を担う者がいるのである。警察官の職務は強力な権力を背景とするものであるため、国民の生活・権利を侵害することがないよう、その職務権限の行使については警察官職務執行法によって規準が法定されている。

[小松 進]

警察官の階級

警察官には、巡査、巡査部長、警部補、警部、警視、警視正、警視長、警視監、警視総監の九つの階級があり、すべての警察官はいずれかの階級に属する。ただし、警察庁長官は、最高位の警察官であるが階級はもたない。また、警視総監は、都警察(警視庁)の長としての職名と階級名が一致するものである。なお、巡査長は、階級ではなく、巡査の階級にある警察官のうち勤務成績が優秀で巡査の実務の指導等にあたる者に与えられる職名である。一般の警察官は、最初、巡査に任ぜられるが、国家公務員Ⅰ種の試験に合格して採用された者(いわゆるキャリア警察官)は、幹部候補として警部補に任ぜられる。

[小松 進]

警察官をもってあてる職

一定の職については、警察官がその職につくことが予定されている。警察庁については、警察庁長官、次長、官房長、局長(通信局長を除く)、管区警察局長、警察大学校長等の職は警察官をもってあてることとされており、都道府県警察については、警視総監、警察本部長、方面本部長、警察署長の職等が警察官をもってあてることとされている。

[小松 進]

任免

警察庁に置かれる警察官は、すべて一般職の国家公務員であり、その任免は、警察庁長官については国家公安委員会が内閣総理大臣の承認を得て行い、警察庁長官以外の警察官については警察庁長官がこれを行うこととされている。

 都道府県警察に置かれる警察官(警視正以上の階級にある者を除く)は、一般職の地方公務員である。しかし、都道府県警察に置かれる警察官のうち、警視正以上の階級にある警察官(これを「地方警務官」という)は一般職の国家公務員とされている。この制度は、都道府県警察の行う事務が当該都道府県警察の事務と国家的性格を帯びた事務をも含むところから、国家的要請にこたえた事務運営が円滑に行われるようにとの配慮から設けられた制度であるとされている。都道府県警察に置かれる警察官の任免は、警視総監については国家公安委員会が都公安委員会の同意を得たうえ内閣総理大臣の承認を得て行い、道府県警察本部長、方面本部長、地方警務官については国家公安委員会が都道府県公安委員会の承認を得て行い、これら以外の警察官については警視総監または道府県警察本部長がそれぞれ都道府県公安委員会の意見を聞いて行うこととされている。

[小松 進]

定員

警察庁に置かれる警察官の定員については、「行政機関の職員の定員に関する法律」により定められている。また、地方警務官の定員は、都道府県警察を通じて政令で定められ、地方警務官以外の警察官の定員は、政令で定める基準に従って条例でそれぞれ定めることとされている。

 2000年度(平成12)の警察職員の定員は26万7599人(警察庁の職員が7640人、都道府県警察の職員が25万9959人)である。このうち警察官の定員は、警察庁に置かれる警察官1431人、都道府県警察に置かれる警察官23万0756人(地方警務官750人を含む)である。

[小松 進]

『村山真維著『警邏警察の研究』(1990・成文堂)』『大日方純夫著『近代日本の警察と地域社会』(2000・筑摩書房)』

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改訂新版 世界大百科事典 「警察官」の意味・わかりやすい解説

警察官 (けいさつかん)

警察事務にたずさわる警察職員のうち,国民の生命,身体および財産を保護するため,実力行使を含む一定の法執行権限をもち,犯罪の予防,鎮圧および捜査,被疑者の逮捕,交通の取締りその他公共の安全と秩序の維持にあたることを職務とするのが警察官である。警察官には,警視総監,警視監,警視長,警視正,警視,警部,警部補,巡査部長,巡査の9階級がある。巡査長は職制であり階級ではない。警視以下の身分は地方公務員,警察庁勤務の警察官および警視正以上は国家公務員である。警察官の任用,分限および保障,服務については地方公務員法あるいは国家公務員法が,勤務時間については労働基準法が,それぞれ基本的に適用される。ただし,警察官の場合,日常生活のあり方の規制にも及ぶきわめて詳細な服務規程があるのが特徴である。

 巡査は,各都道府県警察ごとに一般公募され,試験結果に基づき採用される。採用されると,各都道府県警察学校で1年間の採用時教養をうけたのち(大卒者は8ヵ月),各警察署に配置され,派出所勤務につくことになる。以後の昇任は,警部までは試験によっている。また,幹部昇任者に対する幹部教養,専門分野に応じた専科教養などが各種警察学校で行われる。一方,国家公務員上級試験に合格し警察庁に採用された者は,警部補からスタートし,3年後には警視となる。婦人警察官の採用は,1946年から始まっているが,その担当はおもに交通・防犯部門である。警察官の勤務は,警察署勤務と本部勤務,制服勤務と私服勤務などに分類できる。警察官の権限行使は,上官の指揮をうけ,警察官職務執行法,刑事訴訟法,道路交通法などの個々の授権法令に基づいて行われる。警察官への支給品として被服など,貸与品として,階級章,手帳,手錠,拳銃などがある。警察官の規律,士気なども監察官の監察対象となる。1997年度で,警察官定員総数は22万7734人,警察官1人当り負担人口は全国平均約550人である。
警察
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百科事典マイペディア 「警察官」の意味・わかりやすい解説

警察官【けいさつかん】

警察法の定める警察の責務を遂行する国家および地方公務員。警察官職務執行法に従って職務を行う。警察庁長官を除き,警察官には警視総監,警視監,警視長,警視正,警視,警部,警部補,巡査部長,巡査の9階級がある。1967年制定の巡査長は階級ではなく巡査の一員である。都道府県警察の職員で警視正以上は国家公務員,それ以外は地方公務員。→警察学校警察大学校刑事
→関連項目機動隊警察警察手帳交番司法警察職員婦人警察官

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「警察官」の意味・わかりやすい解説

警察官
けいさつかん

警察法に規定する警察職員のうち,実力行使の権限を有するもの。警視総監,警視監,警視長,警視正,警視,警部,警部補,巡査部長,巡査の階級がある。警察庁に置かれ国家公務員の身分を有するものと,都道府県警察に置かれ地方公務員の身分を有するものとがあるが,都道府県警察に属する警察官であっても,警視正以上の階級のものは国家公務員とされており,この警視正以上の階級の者を地方警務官と呼んでいる。警察官は上官の指揮監督を受けて警察の事務を執行し,小型の武器を所持することができ,職務遂行上必要な被服が支給され装備品を貸与される。その職権の行使は,原則として管轄区域内にかぎられ,またそれらについては警察官職務執行法に定められている。このほか,警察官は一面において司法警察職員としての職務を行なう。(→警察

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デジタル大辞泉プラス 「警察官」の解説

警察官

1933年公開の日本映画。監督:内田吐夢、原作:竹田敏彦、脚色:山内英三、撮影:相阪操一。出演:小杉勇、森静子、中野英治、松本泰輔ほか。

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世界大百科事典(旧版)内の警察官の言及

【警察】より

…警視総監は国家公安委員会が都公安委員会の同意を得たうえ内閣総理大臣の承認を得て任免し,道府県警察本部長および方面本部長は国家公安委員会が道府県公安委員会の同意を得て任免する。また,都道府県警察の職員のうち,警視総監,警察本部長,方面本部長以外の警視正以上の階級にある警察官は一般職の国家公務員として位置づけられ(56条1項),その任免は国家公安委員会が都道府県公安委員会の同意を得て行い,その他の職員は警視総監または警察本部長が都道府県公安委員会の意見を聞いて任免する(55条3項)。なお,都道府県警察の職員のうち,警視正以上の階級にある警察官を地方警務官といい,それ以外の都道府県警察の職員を地方警察職員という。…

【司法警察職員】より

…なおこれらの名称は刑事訴訟法上の資格として用いられるだけで,官名や職名ではなく,このような名称の公務員がいるわけでもない。 警察官は,法律または公安委員会の定めるところにより司法警察職員としての職務を行う(189条)。国家公安委員会規則によれば,巡査部長以上は司法警察員,巡査は司法巡査とされている。…

【捜査】より


[捜査機関,捜査の開始]
 捜査機関とは,法律により捜査を行う権限が与えられているものをいう。捜査の第1次的担当者は司法警察職員(主として警察官のこと)であるが,検察官・検察事務官も,二次的担当者として捜査に携わる。旧刑事訴訟法までは検察官が第1次的捜査担当者であり,司法警察職員は,その指揮を受けて補助をするにすぎなかった。…

※「警察官」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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