先祖返り(読み)センゾガエリ(その他表記)atavism
reversion

デジタル大辞泉 「先祖返り」の意味・読み・例文・類語

せんぞ‐がえり〔‐がへり〕【先祖返り】

何代も前の先祖がもっていた遺伝上の形質が、突然その子孫のある個体に現れること。人間に尾が生じたり異常に毛が生えたりする類。帰先遺伝
(比喩的に)一度は廃れた技術思想が、ふたたび取り上げられること。また、コンピューターで、データを更新する際に、何らかの理由で古いデータに書き換えられてしまうこと。
[補説]2は、単に昔の状態に戻ることについてもいう。

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改訂新版 世界大百科事典 「先祖返り」の意味・わかりやすい解説

先祖返り (せんぞがえり)
atavism
reversion

ある個体に,親はもっていないがそれ以前の祖先がもっていた形質が現れることを先祖返りという。とくに一度退化した器官習性が偶然に,あるいは交雑の結果突然現れることは神秘的な現象と考えられていた。ヒトの尾,副乳,馬の過剰指などがよくひかれる例である。また育種家は野生の祖先種のみがもっている形質が,系統間の交雑の結果突然現れることをしばしば経験している。先祖返りは,ある一つの形質に関してAABBという遺伝子型をもつ祖先種から,祖先種とは違った表現型を示すaaBBとAAbbという系統が生じ,この両系統が交雑してAaBbとなると祖先種のもっている形質が発現するという補足遺伝子(一つの形質を支配する複数の遺伝子)によって説明されたり,復帰突然変異によって説明される場合もあるが,非遺伝的な奇形が偶然に祖先の形質に符合する場合も考えられる。隔世遺伝という言葉が親とは似ず祖父,祖母またはそれ以前の祖先に似ることに対して用いられることもあるが,先祖返りと同義語でもある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「先祖返り」の意味・わかりやすい解説

先祖返り
せんぞがえり

ある系統の個体にその祖先のもっていた形質が再現する現象で、帰先遺伝ともいう。潜性形質については遺伝子の組合せによってしばしばみられる。この例として、ヒトに乳房が二対以上ある場合とか、尾を生ずる場合や多毛症などがあげられているが、これらは突然変異、遺伝子の組換え、または発生過程の異常などによるものと考えられる。この用語は、遺伝学の知識が十分でない時代に用いられたもので、現在では厳密な意味の専門用語としては用いられない。隔世遺伝も先祖返りの例であるが、内容的にはやや異なった意味をもち同義語ではない。

[田島弥太郎]

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百科事典マイペディア 「先祖返り」の意味・わかりやすい解説

先祖返り【せんぞがえり】

普通では現れない,その先祖のもっていた形質が出てくること。スイートピーの系統の違う白色花を交雑すると,原種の紫色の花をもつ子が現れることがある。これはスイートピーのように二つの白色花系統がそれぞれ場所の異なる突然変異で原種から生じたものの場合,交雑により原種がもつ補足遺伝子の組合せができたからである。このほか,遺伝子の組換え,突然変異なども原因となり得る。ヒトでは数対の乳房をもつもの,尾骨の発達するものなどが知られる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「先祖返り」の意味・わかりやすい解説

先祖返り
せんぞがえり
atavism

直接の両親でなく,それより遠い祖先の形質が子孫に突然に現れること。通常のメンデル式遺伝で,雑種から劣性形質を示す劣性遺伝子ホモの個体が現れるのは一種の先祖返りであるが,通常いうこの語は,さらに遠い祖先形質の出現をさしている。たとえば人間での尾とか複数の乳頭とか全身の多毛の出現など。これらは単に劣性形質の分離的再現のみでなく,突然変異とか,形質発現過程での攪乱も考えにいれて説明される。

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