松尾寺(まつおでら 奈良県)(読み)まつおでら

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

松尾寺(まつおでら 奈良県)
まつおでら

奈良県大和郡山(やまとこおりやま)市山田町松尾山にある真言(しんごん)宗の寺。山号は補陀落山(ふだらくさん)。通称松尾山(まつのおさん)。本尊は十一面千手(せんじゅ)千眼観音菩薩(かんのんぼさつ)。718年(養老2)舎人(とねり)親王が元正(げんしょう)天皇の勅命で『日本書紀』30巻、『系譜』1巻を編集するにあたり、成就(じょうじゅ)祈願のため永業(ようごう)が開創した勅願寺だと伝えられる。中世以後、修験道(しゅげんどう)の寺として栄えたので修験関係の資料を多数所蔵する。また本尊の千手観音像(鎌倉時代、国重要文化財)は厄除(やくよけ)観音として信仰を集め、満願の日が初午(はつうま)の日であったためいまも初午大祭には「まつのおさん詣(まい)り」と称して全国からの参拝者でにぎわう。現在は本堂(室町時代、重文)、大黒堂、三重塔などがある。木造十一面観音立像(平安中期)、木造大黒天立像(鎌倉時代)、絹本着色阿弥陀(あみだ)聖衆来迎図(鎌倉時代、以上重文)、金銅装山伏笈(おい)(室町時代、県文化財)などがある。なお鎮守松尾山神社は京都の松尾大明神を勧請(かんじょう)したものである。

宮坂宥勝

『『古寺巡礼 奈良16 松尾寺』(1980・淡交社)』

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