林泉高致(読み)りんせんこうち(その他表記)Lín quán gāo zhì

改訂新版 世界大百科事典 「林泉高致」の意味・わかりやすい解説

林泉高致 (りんせんこうち)
Lín quán gāo zhì

中国北宋郭煕(かくき)の山水画論を,子の郭思が筆記し編纂したもの。山水訓,画意,画訣,画題,画格拾遺,画記の6編から成り,通行本には画記が欠けていたが,近年,四庫全書本によって許光凝の後序とともに補われた。三遠法,四時朝暮の景の変化など,唐・五代以来の画法を集大成すると同時に,郭煕の発明した新画法も記し,また郭煕が宮廷画家としていかに神宗の寵遇を受け,活躍したかが,これによって知れる。
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百科事典マイペディア 「林泉高致」の意味・わかりやすい解説

林泉高致【りんせんこうち】

中国,北宋時代の画論。1巻。郭煕(かくき)山水画論を子の郭思が編集増補したもので,三遠六法など画面構成の方法や山水画の技法を説く。北宋の画家自然観理想を知るものとして貴重な文献

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世界大百科事典(旧版)内の林泉高致の言及

【遠近法】より

…次に,中国絵画における遠近表現は主として山水画に関係しているが,山水画の構図上の基本的な3方式を説いたのが,北宋(11世紀)の画家郭熙であった。すなわち,彼の著《林泉高致》には,高遠(山の麓から山頂を見上げる見方),平遠(前の山から後の山を眺める見方),深遠(山の手前から山の背後をうかがう見方)の三遠が説かれている。このうち,高遠は俯瞰図法に,平遠と深遠は透視図法による構図につながる点があるが,西洋画のように合理的な線的遠近法の原理に基づくものではなく,遠近法というよりも構図法というべきであろう。…

【画論】より

…五代,宋代は,郭若虚《図画見聞誌》,鄧椿《画継》が,《歴代名画記》の後をうけ,輝かしい一時期を画した当代の絵画を記述するほか,劉道醇《五代名画補遺》《聖朝名画評》も部門別に品評する。山水画論には荆浩《筆法記》,郭熙《林泉高致》があり,前者は形似に対する真を取り上げ,画とは何かを問い,後者は自然に忠実な〈写真〉主義のうえに,さらに士大夫社会においてあるべき理論の山水を述べる。また蘇軾(そしよく)は文人として詩画一致を説き,米芾(べいふつ)は董源礼賛にみられるように,江南画を主張し,ともにきたるべき文人画の先駆けをなした。…

【山水画】より

…儒教の隆盛は勧戒画としての人物画を登場させ,鬼神の否定は逆に鬼神の住みかとしての山水を尊重し〈山水画〉を絵画の主流にさせたのである。北宋時代の山水画家郭熙が撰した画論《林泉高致》に山水画の評価について〈行ってみたくなる,眺望をめでてみたくなる,そこで清遊してみたくなる,そして最後はそこに居住し,骨を埋めて悔いない〉ほどの理想郷が描かれるにいたって,最高の山水画になるというのである。詩画による山水への逃避,俗中にいながら人間世界を超えるところに,山水画は生命をもつ,とされたのであった。…

【水墨画】より

…概していえば筆すなわち線描は客観的描写を,墨は主情的表現を象徴するもので,水墨画の世界はこの筆墨二極間に成立する楕円にも比せられ,そこに多様な皴法が展開されるのである。北宋の諸家,たとえば郭若虚の《図画(とが)見聞志》はそれを落筆,皴淡,留素借地とし,総称して破墨の功といい,郭熙の《林泉高致》は筆墨の間を斡淡,皴擦,渲,刷,捽,擢,点に分け,韓拙の《山水純全集》は皴払は多端で一点一画に諸家の体法のあることをいい,披麻皴,点錯皴,斫砕皴,横皴,連水皴という命名をあげている。 水墨の技法は元来山水画のものであったが,やがて人物画にも応用され,樹石を描く皴法と人物の衣文の皴法とは同一視された。…

※「林泉高致」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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