日本大百科全書(ニッポニカ) 「林逋」の意味・わかりやすい解説
林逋
りんほ
(967―1028)
中国、北宋(ほくそう)の隠遁(いんとん)詩人。字(あざな)は君復。杭(こう)州(浙江(せっこう)省)の人。死後に追贈された和靖(わせい)の諡(おくりな)で知られる。西湖中の孤山に隠棲(いんせい)し、20年間、市街に足を入れず、一生を独身で通し、鶴(つる)を飼い、梅を賞して過ごした。詩にも好んで梅を詠じて、「疎影横斜して水清浅、暗香浮動して月黄昏(こうこん)」(梅花)のような名句があり、梅花は彼によって新しい文学的生命を吹き込まれた。その詩には晩唐の艶麗(えんれい)繊細の影響が残るが、宋詩の平静淡白の先駆となった。『宋林和靖先生詩集』六巻がある。わが国でも江戸時代から広く愛好され、1686年(貞享3)刊の和刻本がある。
[入谷仙介]