日本大百科全書(ニッポニカ) 「柔石」の意味・わかりやすい解説
柔石
じゅうせき / ロウシー
(1902―1931)
中国の小説家。左連五烈士の一人。本名趙(ちょう)平復。浙江(せっこう/チョーチヤン)省出身。浙江第一師範時代に潘漠華(はんばくか)、馮雪峰(ふうせっぽう/フォンシュエフォン)らと文学活動を始める。卒業後、小中学教員、北京(ペキン)大学聴講生などをしながら小説を書き、『瘋人(ふうじん)』を出版。1928年上海(シャンハイ)に出、魯迅(ろじん/ルーシュン)の知遇を得て『語絲(ごし)』を編集。友人らと朝花社を設立、ソ連・東欧、北欧の文学と版画の紹介に尽力。30年自由運動大同盟発起に参加、同年左連結成に加わり常任執行委員などを歴任するが、31年1月、他の作家、党員とともに逮捕、銃殺され、魯迅らに哀惜された。子を産ませるために妻を貸す農村の悲劇『奴隷(どれい)となった母親』、封建制と闘い敗北する青年教師を描いた『二月』などが代表作。
[佐治俊彦]
『松井博光訳「奴隷となった母親」(『現代中国文学11』所収・1971・河出書房新社)』