日本大百科全書(ニッポニカ) 「殷夫」の意味・わかりやすい解説
殷夫
いんふ / インフー
(1909?―1931)
中国の詩人。本名徐柏庭。筆名はほかに白莽(パイマン)、任夫(レンフー)、徐白(シュパイ)など。浙江(せっこう/チョーチヤン)省象山県出身。上海(シャンハイ)同済大学を中退。詩作はほとんど1928年から30年の間に集中し、前期の繊美なことばで内面の苦悩を表した叙情詩(『孩児の塔』)から後期の革命的熱情をうたった力強い律動的な詩(組詩『血字』『われらの詩』など)への変化に、彼の生の軌跡をみることができる。青年労働者運動に携わり『摩登(モダン)青年』『列寧(レーニン)青年』を編集、ハンガリーの詩人ペテーフィの翻訳を通じて魯迅(ろじん/ルーシュン)の知己を得た。1931年上海の竜華にて刑死。左連五烈士の一人。
[北岡正子]
『今村与志雄訳『中国現代文学選集19』(1962・平凡社)』