日本大百科全書(ニッポニカ) 「栗戦書」の意味・わかりやすい解説
栗戦書
りつせんしょ / リーチャンシュー
(1950― )
中国の政治家。河北(かほく)省平山(へいざん)県で生まれる。1976年から実務活動が始まるが、1998年までは河北省内で活動。1975年4月中国共産党に入党。1983年から1985年まで同省無極(むきょく)県党委員会書記として勤務し、当時、同省正定(せいてい)県党委書記として勤務していた習近平(しゅうきんぺい)と出会い、交流が始まる。1998年から2003年まで陝西(せんせい)省党委常務委員として活動した。2003年から2010年まで、黒竜江(こくりゅうこう)省党委副書記に転出し、その間、2004~2007年副省長、2007~2008年省長代理、2008~2010年省長を兼務した。2010年に貴州(きしゅう)省党委書記に抜擢され、2012年まで省人民代表大会常務委員会主任を兼務した。習近平の党総書記後継が決まってから、2012年初め党中央弁公庁の常務副主任に抜擢され、第18回党大会(2012)直後、中央政治局委員、中央書記処書記、中央弁公庁主任に、やがて新設の中央国家安全委員会弁公室主任を兼任した。以後習近平のもっとも緊密な側近として活動し、第19回党大会(2017)では席次ナンバー3の政治局常務委員に昇進し、2018年春の全人代大会では全人代常務委員会委員長に就任した。
以上から理解されるように、2012年に習近平は総書記になる直前、人事面でいち早くイニシアティブを握るために党中央弁公庁主任に登用したのが栗戦書であった。彼は習近平が最初に地方活動を始めた河北省正定県の隣県で党書記をし、その後も親交を深めていた。栗は習より3歳年上、父は人民解放軍でも大隊長と地位は高くなく、早く戦死していた。1998年まではもっぱら河北省内での活動に従事しており、ここで習との接触があった。当時の上司と関係がうまくいかなかった習に対して、栗が相談にのったというエピソードもある。栗は50歳になって頭角を現した。それまで地元での農村工作がもっぱらであったが、その後、省党組織部などの経験を積んだ。習近平の人脈のなかですでに地方のトップにまでなっていた、数少ない指導者の一人であった。
[天児 慧 2018年4月18日]