イニシアティブ(読み)いにしあてぃぶ(英語表記)initiative

翻訳|initiative

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イニシアティブ」の意味・わかりやすい解説

イニシアティブ
いにしあてぃぶ
initiative

直接民主制の一形態で、間接民主制(代議政治)の下で有権者が直接、政治に参加することによって代議政治の欠陥を修正する方法。一定数以上の有権者が法案をつくって、直接、議会に提出するか、または提出しないで、ある法案の制定改廃を一般投票にかける制度である。そのため直接発案または国民発案ともよばれる。スイスのボード州が1845年に創設したのが世界でもっとも古い。アメリカでは現在28州以上と多数の都市に採用されている。スイス連邦憲法(1874制定)では憲法の一部改正(121条)について、イタリア共和国憲法(1947制定)では国民に法律発案権(71条)、法津改廃請求権(75条)を認めている。わが国の地方自治法は条例制定・改廃請求権(74条)を認めている。イニシアティブは国民の利益を考慮して立法をなすところに長所があるが、国民の一部の悪賢い者が無責任な立場で一部の者の利益のため発案するという短所がある。

伊藤 勲]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イニシアティブ」の意味・わかりやすい解説

イニシアティブ
initiative

直接民主制の一方法で,国家 (地方公共団体) の意思形成に関し,国民 (住民) に発案権を認め,その成否を国民 (住民) 投票の結果にかからしめるものをいう。国民発案ないしは直接発案ともいわれる。国民 (住民) 発案には,案を直接国民 (住民) 投票に付すもの (直接発案) と,案をまず議会の審議にゆだね,議会の同意を得られない場合に国民 (住民) 投票に付すもの (間接発案) とがある。日本の地方自治法 74条の認める条例の制定・改廃の請求 (その地方公共団体の有権者総数の 50分の1以上の連署を必要とする) は,案を議会に付議するにとどまり,議会の同意が得られない場合における住民投票までは定めていないが,広い意味での国民発案といえる。日本の国政レベルでは,国民発案の制度は設けられていない。

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