日本大百科全書(ニッポニカ) 「植物名実図考」の意味・わかりやすい解説
植物名実図考
しょくぶつめいじつずこう
中国最初の植物図鑑。清(しん)代、河南省の呉其濬(ごきしゅん)によって書かれた。1714種の植物の図と説明からなり、とくに図は著者が実見して描いたもので、それまでの本草(ほんぞう)書にある図と比べると、はるかに写実的であり、中国植物の研究資料として内外でその評価は高い。また1885年(光緒11)に張紹棠(ちょうしょうどう)により刊行された『本草綱目』の付図は本書の図を引用したものである。初版は1848年(道光28)で、著者が没した翌年である。植物学的、薬物学的な記載に加えて、著者のさまざまな政治哲学や人生哲学に関する記載が随所にみられるのも本書の特色である。
[難波恒雄・御影雅幸]