楓・槭樹・鶏冠木(読み)かえで

精選版 日本国語大辞典 「楓・槭樹・鶏冠木」の意味・読み・例文・類語

かえ‐で かへ‥【楓・槭樹・鶏冠木】

〘名〙 (「かえるで(蝦手)」の変化した語)
カエデ科カエデ属植物の総称名。北半球の温帯地方に約一二五種あり、日本には約二五種が野生し、観賞用として庭木盆栽にする。高さ二メートルから二〇メートルに達するものもある。葉は対生し多くは単葉の掌形で長柄をそなえ、先端に鋸歯(きょし)がある。霜がおりると黄葉や紅葉する。四、五月ごろ小枝の先に四~五弁の小花をつける。果実は竹とんぼに似て翼があり、左右二室に分かれている。材は、建築、家具、彫刻、楽器材などに用いる。もみじ。かえるで。かえでのき。かえるでのき。《季・秋》
▼かえでの花《季・春》
▼かえでの芽《季・春》
新撰字鏡(898‐901頃)「鶏冠樹 加戸天」
※伊勢物語(10C前)二〇「やよひばかりに、かへでのもみぢのいとおもしろきを折りて」
② 襲(かさね)の色目。表裏ともに萌葱(もえぎ)のものをいう。
※雁衣鈔(鎌倉末か)「鶏冠木、表裏同」
③ 紋所の名。①の葉を図案化したもの。
※太平記(14C後)四〇「金泥にて鶏冠木(カエデ)を書きたる直垂に」
④ 小児や女子などの小さくかわいらしい手を、①の葉にたとえていう。
※浄瑠璃・夕霧阿波鳴渡(1712頃)中「玄関の戸をとんとんと、たたく楓のわくらばに」
[語誌](1)紅葉する樹木の代表的なものであり、モミヂとあるのは①である場合が多い。そのためか、詩歌にカヘデ、カヘルデの語形は少ない。
(2)「楓」の字は、「本草和名」「新撰字鏡」にカツラと読み、「和名抄」にはヲカツラとしている。これらによって、「万葉集」の「楓」もカツラと訓読されている。のちに、「楓」がカエデに用いられるようになったが、中国で「楓」というのは、マンサク科のフウであり、カエデとは別のものである。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報