日本大百科全書(ニッポニカ) 「榎本弥左衛門」の意味・わかりやすい解説
榎本弥左衛門
えのもとやざえもん
(1625―1686)
江戸前期の商人。武蔵(むさし)国川越(かわごえ)(埼玉県川越市)の人。商売の中心は、江戸で関西方面からの下り塩を買い付け川越藩に納めるほか、川越や近在で小売人を通じて売りさばく塩仲買業。商業活動と相続争いを通じて家永続についての強い意識をもつようになり、利欲を積極的に肯定した家職(かしょく)論などを展開した。近世前期の庶民の書き記した日記類がほとんど残存していないなかで、弥左衛門の日々のメモ『万(よろず)の覚(おぼえ)』と子孫のために記した『三子(みつご)よりの覚(おぼえ)』は、ともに貴重な史料になっている。
[奈倉哲三]
『『川越市史 史料編 近世Ⅱ』(1977・川越市)』