… 動物の体色は決して無意味なものではなく,さまざまな機能をもっていると考えられる。体色を機能によって大別すれば,隠蔽色concealing colorationと標識色signal colorationとになる。前者はいわゆる保護色の範疇(はんちゆう)に入るもので,その動物の存在を目だたなくすることによって,生存価を高めると考えられるような色である。…
…たとえば,隠蔽色のうち,被食者のいわゆる保護色では,背地の色あるいは紋様に適応する速い生理学的変化の例が多く知られている。標識色の代表例である婚姻色は繁殖期に現れる美しい彩色であり,形態学的変化に属する。形態学的変化は一般的に内分泌系の制御による。…
…草の葉の上でじっと待ち伏せるカマキリの緑色の体色や多くのヘビの模様は,そのよい例である。 さらに隠蔽色は,まったく逆の形で適応的意味をもつ体色,つまり標識色signal colorationと組みあって,その効果を強めている。標識色というのは,きわめて目だちやすい色彩をとることによって,その動物の存在を相手に知らせ,それによってその動物が利益を得るような体色のことで,敵をびっくりさせる威嚇色threatening coloration(芋虫やガの目玉模様など),自分が有毒,危険な動物であることを相手に知らせる警告色warning coloration(ハチの黄と黒の縞模様,毛虫の赤と黒のはでな毛の色,毒をもつ魚,カエル,ヘビのはでな斑紋など),ほんとうは有毒でも危険でもないのに,有毒動物の警告色や体形をまねた擬態,および同じ種の動物個体間で,雌雄,親子などが認識しあう認識色(チョウの翅の色,哺乳類・鳥類の雛の親とまるでちがう体色など)に分けられる。…
※「標識色」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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