威嚇色(読み)イカクショク(その他表記)threatening coloration

デジタル大辞泉 「威嚇色」の意味・読み・例文・類語

いかく‐しょく〔ヰカク‐〕【威嚇色】

動物標識色の一。奇妙な色や斑紋はんもんによって、捕食者攻撃をかわすと考えられるもの。ガのはねチョウ幼虫眼状紋など。

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精選版 日本国語大辞典 「威嚇色」の意味・読み・例文・類語

いかく‐しょくヰカク‥【威嚇色】

  1. 動物の体表模様うち、他に対して威嚇効果のあるもの。蛾(が)の翅(はね)の眼状紋など。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「威嚇色」の意味・わかりやすい解説

威嚇色
いかくしょく
threatening coloration

動物の標識色 signal colorationの一型で,特に目立つ色彩斑紋形状によって,捕食されるのを避けると考えられるもの。たとえばアゲハチョウ幼虫の眼状紋はその例であるが,この幼虫が同時に悪臭のある角を突き出すことも考えると,警告色とも考えられる。しかし一般に威嚇色では,単に目立つことのほか,少なくとも人間の目で見て奇怪・異様な感じを伴うものが多い。アケビコノハのように後翅のみに鮮やかな斑紋をもつガが急に飛び立つときにも,威嚇的効果が生じることは考えられる。捕食する側の動物が実際に驚かされているかどうかは容易に判別しがたいが,鳥に対する昆虫の翅の目玉模様では実験によって威嚇効果のあることが確かめられている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「威嚇色」の意味・わかりやすい解説

威嚇色
いかくしょく

動物の体表にみられる色彩のなかで、捕食者や同種の他個体に対して威嚇の効果があるものをいう。その動物が同時に毒や武器を有する場合は、区別して警戒色とよぶ。一種の標識色であり、環境のなかでよく目だつ色彩や模様になっている。ガのはねの目玉模様はその典型的な例である。普段はむしろ目だたぬように隠されていて、威嚇行動に伴って突如相手に向けて誇示されるようになっていることが多い。

[木村武二]

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百科事典マイペディア 「威嚇色」の意味・わかりやすい解説

威嚇色【いかくしょく】

動物の色彩や斑紋の中で,相手を威嚇し,それによって捕食を免れる効果をもつもの。チョウやガの成虫や幼虫に見られる眼状紋はその例。普段は隠されていることが多く,攻撃された時に突然それを示す行動と結びついて効果をあげる。→警告色保護色

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世界大百科事典(旧版)内の威嚇色の言及

【体色】より

…前者はいわゆる保護色の範疇(はんちゆう)に入るもので,その動物の存在を目だたなくすることによって,生存価を高めると考えられるような色である。後者は逆に,わざわざその存在を目だたせることによって生存価を高めるもので,同種異性の発見,認知に役だつ認識色recognition coloration,捕食者を驚かす威嚇色threatening coloration,自分が有毒ないし不味であることを示して捕食されることを避ける警告色(警戒色)warning coloration,警告色をもった他動物に似た姿,体色をもつことによって捕食者を欺く擬態とに分けられる。しかし,ほとんどすべての場合,動物の体色は多面的な機能をもっており,例えばチョウの羽の色,模様は認識色であると同時に隠蔽的機能をもつ。…

【保護色】より

… さらに隠蔽色は,まったく逆の形で適応的意味をもつ体色,つまり標識色signal colorationと組みあって,その効果を強めている。標識色というのは,きわめて目だちやすい色彩をとることによって,その動物の存在を相手に知らせ,それによってその動物が利益を得るような体色のことで,敵をびっくりさせる威嚇色threatening coloration(芋虫やガの目玉模様など),自分が有毒,危険な動物であることを相手に知らせる警告色warning coloration(ハチの黄と黒の縞模様,毛虫の赤と黒のはでな毛の色,毒をもつ魚,カエル,ヘビのはでな斑紋など),ほんとうは有毒でも危険でもないのに,有毒動物の警告色や体形をまねた擬態,および同じ種の動物個体間で,雌雄,親子などが認識しあう認識色(チョウの翅の色,哺乳類・鳥類の雛の親とまるでちがう体色など)に分けられる。 このような標識色をもつ動物にも,二つの形の色をともにそろえている場合が多い。…

※「威嚇色」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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