改訂新版 世界大百科事典 「横行人」の意味・わかりやすい解説
横行人 (おうぎょうにん)
〈おうこうにん〉ともいう。横行とは,もともとは漢語であり,横向きに進行すること,勝手気ままにのし歩くことを意味する語として,日本でも古くから用いられていたが,10世紀以降,とくに傍若無人のふるまいを常とするような人々を朝廷や荘園領主たちが非難する場合にしきりに用いられるようになり,やがて横行人という語が派生し流布した。横行人といわれるものの内容は,厳密には規定しがたいが,荘園や公領において,上の命令・指示に服従せず,ややもすると反逆的行動に走りがちであった現地の荘官や有力農民,ならびに貢納物,官物等の略奪をこととした武装の盗賊集団,さらには諸国をわたり歩いた浮浪の民などがあげられ,鎌倉中・末期に活動した悪党,南北朝内乱期にめだった溢れ者(あぶれもの)と,その基本性格をひとしくするものとみられる。なお,中世,奈良方面には横行の名で呼ばれる隷属民の集団が存在し,鎌倉時代末期の1324年(元亨4)に大和国の河上の横行が奈良の北山の非人と利権をめぐって対抗し,合戦に及んだことも知られている。
執筆者:横井 清
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報