横行(読み)おうこう

精選版 日本国語大辞典 「横行」の意味・読み・例文・類語

おう‐こう ワウカウ【横行】

〘名〙
① (━する) 横ざまに行くこと。また、横にはって行くこと。おうぎょう。
※山陽詩鈔(1833)三・壇浦行「独有介虫喚姓平、沙際至今尚横行」
② (━する) 勝手気ままに歩き回ること。自由にのし歩くこと。おうぎょう。
※百巻本東大寺文書‐四三・永延四年(990)三月一三日・大宰府牒案「明延号庄司心執行、曾無弁済、加之横行庄内
太平記(14C後)一二「参内の時も、輿の前後に数百騎の兵打囲(かこ)んで、路次を横行しければ」 〔史記‐伯夷伝〕
③ (━する) 勝手なふるまいが盛んであること。ほしいままにはびこること。おうぎょう。
※続日本紀‐養老六年(722)七月己卯「縦恣横行。既難平理
※文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉四「此時代に在て天下に横行する野蛮種族なる者は」
④ 「しょうもんし(唱門師)②」の異称。〔経覚私要鈔‐宝徳三年(1451)二月一三日〕

おう‐ぎょう ワウギャウ【横行】

〘名〙
説経節・しだの小太郎(1751‐64頃か)三「天ぢく、しうのたたかいに。歩兵(ぶへう)がさきにかくれば。横行(ワウゲウ)角行かけあわする」
サントスの御作業(1591)二「マチ コウヂ ヲ vǒguiǒ(ワウギャウ) スル ソウカク ノ ドウジ ニ ウタワセタル モノ ナリ」
③ (形動) 勝手なふるまいが盛んであること。ほしいままにはびこること。また、そのさま。
日葡辞書(1603‐04)「Vǒguiǒna(ワウギャウナ) ヒト
読本・近江県物語(1808)二「かくぬすびとの、はびこり横行(ワウギャウ)せる比」

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デジタル大辞泉 「横行」の意味・読み・例文・類語

おう‐こう〔ワウカウ〕【横行】

[名](スル)
自由気ままに歩きまわること。「やくざが街を横行する」
悪事がしきりに行われること。ほしいままに振る舞うこと。「汚職横行する」
横へ進むこと。横向きに歩くこと。「カニ横行
[類語]氾濫はびこるのさばる広がる流行猖獗しょうけつ跋扈ばっこ跳梁ちょうりょう流布伝播浸透波及弥漫びまん広まる行き渡る

おう‐ぎょう〔ワウギヤウ〕【横行】

[名](スル)
おうこう(横行)1」に同じ。
おうこう(横行)2」に同じ。
「斯かる―の行状ふるまひも」〈人・恩愛二葉草〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

普及版 字通 「横行」の読み・字形・画数・意味

【横行】おうこう(わうかう)

勝手に行動する。〔史記、伯夷伝〕盜跖日に不辜(ふこ)(罪なき人)をし、~黨を聚むること數千人、天下に行す。(つひ)に壽を以てふ。是れ何の(したが)ふや。

字通「横」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内の横行の言及

【横行人】より

…〈おうこうにん〉ともいう。横行とは,もともとは漢語であり,横向きに進行すること,勝手気ままにのし歩くことを意味する語として,日本でも古くから用いられていたが,10世紀以降,とくに傍若無人のふるまいを常とするような人々を朝廷や荘園領主たちが非難する場合にしきりに用いられるようになり,やがて横行人という語が派生し流布した。横行人といわれるものの内容は,厳密には規定しがたいが,荘園や公領において,上の命令・指示に服従せず,ややもすると反逆的行動に走りがちであった現地の荘官や有力農民,ならびに貢納物,官物等の略奪をこととした武装の盗賊集団,さらには諸国をわたり歩いた浮浪の民などがあげられ,鎌倉中・末期に活動した悪党,南北朝内乱期にめだった溢れ者(あぶれもの)と,その基本性格をひとしくするものとみられる。…

※「横行」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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