〈あふれもの〉ともいう。一定の容器,枠内に収まりきらずに溢れ出し,むだになることを意味する“溢れ”から派生したことばで,はみ出した人,常軌を逸した人,通常の社会集団からは無為,無用の失格者とみられる人,浮浪無頼の徒,ならず者,ごろつき等々の意味で長らく用いられてきている。11世紀半ばころには広く流布していたものとみられる。しかし,溢れ者と呼ばれる人たちが集団をなして動き,それが歴史の変革に深いつながりをもったのは,13世紀末ごろから14世紀にかけての時代,つまり鎌倉時代末期から南北朝内乱期にかけての時代で,戦闘に際して随所にたむろしていた浮浪無頼の徒が傭兵となって軍団に編入され,活動し,軽視できない役割を果たしたことによる。彼らが軍事力の一端として実力を買われ利用されるにいたったのは,一騎打ちから集団戦へという,中世における戦闘形式の大転換と密接なかかわりをもつといえよう。
→横行人(おうぎょうにん)
執筆者:横井 清
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報