日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
機械・トラクター・ステーション
きかいとらくたーすてーしょん
Машинно‐Тракторная Станция/Mashinno-Traktornaya Stantsiya ロシア語
略称はエム・テー・エスМТС/MTS。ソ連の1930年以降の全面的農業集団化の時期に、集団農場に対しトラクター、コンバインなどでのサービスを提供し、総収穫の2割前後もの現物支払いを受けていた組織で、共産党員の少ない農村部での党の拠点でもあった。一時は7000余に達していたが、第二次世界大戦中にナチスによって約4割も破壊された。戦後ふたたび9000前後になったが、1958年フルシチョフ農政下で解体された。同一の土地に2人の主人はいらぬというほどコルホーズが成長していたからである。60万台のトラクター、32万台のコンバインおよび約100万人の機械手がコルホーズとソフホーズに分散移籍された。「コルホーズ自体のコムニズム化」をもねらったこの解体政策で農村の党組織は強化された。しかし、機械類の購入はコルホーズにとっては負担が大きく債務増大につながった。エム・テー・エスのあとは修理・技術ステーションРемонтно‐Техническая Станция/Remontno‐Tehnicheskaya Stantsiya(略称エル・テー・エスРТС/RTS)として残された。
[中山弘正]