欧州債務問題(読み)おうしゅうさいむもんだい

百科事典マイペディア 「欧州債務問題」の意味・わかりやすい解説

欧州債務問題【おうしゅうさいむもんだい】

2008年のギリシアに端を発しEU諸国で次々と明らかになった財政破綻,財政危機,ソブリンリスクユーロ危機など,EUの債務問題を総称する言葉。EU,欧州中央銀行,IMFは,ユーロ圏各国に厳しい財政規律を求め,域内で最強の資金力をもつドイツの支援を得て,債務問題の深刻化にはどめをかけようとしてきた。しかし,危機に陥った各国とも国内に高い失業率を抱え,公務員の削減,公的年金の加給年齢の引き上げなどを含む緊縮財政が社会不安を増大させることは必至で,緊縮政策だけでなく成長戦略を絡めて国内を説得する方向に動いており,各国政府がどのように実効性のある対策を打ち出すことができるが問われた。アイルランドポルトガルスペインイタリアに続き,2013年にはキプロスの財政破綻が明らかとなった。2014年はEUの厳しいチェックもあって,各国で緊縮策が実行をあげ,危機は小康状態にあった。しかし2015年1月ギリシアで,緊縮策に反対し〈EUからの借入金は返済しない〉という公約を打ち出す急進左派連合(SYRIZA)と〈独立ギリシア人〉党(ANEL,右派)がツイプラス連立政権を発足させ,再び不透明な情勢となっている。ギリシアのこうした動きはスペインなどで連鎖反応を起こすことも懸念されている。欧州債務問題はユーロ導入によって各国で実体経済乖離(かいり)した信用バブルを生じさせ,それが一気に崩壊したことが直接の原因である。通貨統合を性急に進めたことに対して,非ユーロ圏のEU加盟国から批判が出ている。
→関連項目IMF欧州議会欧州金融安定ファシリティオランダ世界金融危機チェコベルギーヨーロッパ連合リーマンショック

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