日本電信電話(読み)にっぽんでんしんでんわ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「日本電信電話」の意味・わかりやすい解説

日本電信電話(株)
にっぽんでんしんでんわ

東日本電信電話、西日本電信電話NTTコミュニケーションズ、NTTドコモNTTデータなどの各社からなるNTTグループの中核を占める持株会社。1999年(平成11)7月1日に発足。略称NTT(NIPPON TELEGRAPH AND TELEPHONE CORPORATION)。第二次世界大戦まで一貫して官営で営まれてきた日本の電信電話事業について、戦後その経営形態の改革が検討された結果、公共企業として運営することになり、1952年(昭和27)8月に日本電信電話公社が設立された。戦前の官営が内包していた限界への反省から、同公社は「公衆電気通信事業の合理的且(か)つ能率的な経営の体制を確立し、公衆電気通信設備の整備及び拡充を促進」することを目的の基本とした。

 翌1953年には第一次電信電話拡充五か年計画をスタートさせ、1958年の第二次計画以降、「申し込めばすぐつく電話」と「全国どこへでもダイヤルでかかる電話」を二大目標に、電話の増設と通信技術の改善を精力的、計画的に推進した。まず電話機では1953年に4号、1962年に600形に切り換え、交換機では1955年にクロスバー交換機、1972年に電子交換機を導入し、伝送面でも1958年には全国縦断マイクロウェーブ網を完成した。この結果前記の二大目標は1978年に積滞解消を、1979年には全国自動化を達成した。

 またこの間、1956年に加入電信テレックス)、1968年にデータ通信、1973年に電話ファックス、1979年に公衆自動車電話などの新規サービスを開始した。こうして電気通信サービスの拡充によって同公社は、国内の通信機需要を増大しただけでなく、交換、マイクロ波、光通信、超LSI、デジタル通信による高度情報通信システム等の先端技術の開発でも主導的役割を果たしてきた。

 その後行政改革の一環として1985年4月、電電改革三法が施行され、同公社は民営化されて資本金7800億円、総資産10兆円、従業員数31万4000人の日本最大の株式会社に衣替えした。これに伴い明治以来続いた通信の独占時代は終わり、自由競争の時代を迎えた。

 さらに1996年(平成8)2月郵政省電気通信審議会は、通信事業の規制緩和と競争促進を目的として、日本電信電話(株)の分割を答申、同年12月に郵政省と日本電信電話で分割案が合意され、1997年6月には日本電信電話株式会社法の改正が行われた(電気通信審議会は、2001年1月電気技術審議会と統合されて総務省情報通信審議会となった)。そして1999年7月1日、日本電信電話(株)は分割・再編成され、新しい日本電信電話(株)は純粋な持株会社として存続し、その下に東日本電信電話(株)、西日本電信電話(株)、NTTコミュニケーションズ(株)が誕生した。新生の日本電信電話(株)はNTTドコモ(株)、NTTデータ(株)なども傘下におさめ、また旧日本電信電話の研究開発部門を継承している。資本金9378億円(2008)、従業員数2900人(2008)。

●東日本電信電話(株) 旧日本電信電話のうち、関東、甲信越地方以北を担当する地域電信通信会社。地域に属する県内通話・通信業務を取り扱う。略称NTT東日本。資本金3350億円(2008)、従業員数5850人(2008)。

●西日本電信電話(株) 旧日本電信電話のうち、北陸、東海地方以西を担当する地域電信通信会社。地域に属する県内通話・通信業務を取り扱う。略称NTT西日本。資本金3120億円(2008)、従業員数5800人(2008)。

●NTTコミュニケーションズ(株) 二つ以上の都道府県にまたがる通話・通信業務、および国際通話・通信業務を取り扱う。資本金2117億円(2008)、従業員数8550人(2008)。

●NTTドコモ(株) 移動通信を取り扱う会社。1991年8月設立。携帯電話ではトップのシェアをもつ。データ伝送も行う。資本金9497億円(2008)、従業員数5843人(2008)。

●NTTデータ(株) 情報サービスの提供を行う会社。1998年5月設立。公共機関、金融機関などに向けての、データ通信、システム開発のサービスが主体を占めている。資本金1425億円(2008)、従業員数8550人(2008)。

[中村清司]

『日本電信電話公社編『電信電話事業史』(1959・電気通信協会)』『伊東光晴編著『情報通信の発展とNTTの今後』(1996・日本評論社)』『行政管理研究センター監修、今村都南雄編著『民営化の効果と現実――NTTとJR』(1997・中央法規出版)』『小島郁夫著『NTT 21世紀への挑戦経営――通信ビッグバンを勝ち抜くNTTの野望と戦略』(1998・三心堂出版社)』『宮津純一郎著『NTT改革』(2003・NTT出版)』『石黒一憲著『国際競争力における技術の視点――知られざるNTTの研究開発』(2004・NTT出版)』『日経ニューメディア編『NTTが描く新世代事業ビジョン――新中期経営戦略の全貌』(2004・日経BP社、日経BP出版センター発売)』

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百科事典マイペディア 「日本電信電話」の意味・わかりやすい解説

日本電信電話[株]【にっぽんでんしんでんわ】

略称NTT。日本電信電話公社電電公社)が日本電信電話会社法など,いわゆる電電3法(1984年成立)に基づき,1985年4月に民営化して発足した企業。公社制度の独占事業に対し,高度情報化社会の進展に伴う企業の進出要請,電気通信事業の閉鎖性の打開に対応。1999年7月本体は持株会社となり,業務は長距離通信会社NTTコミュニケーションズと東西2社の地域通信会社とに分割された。また持株会社の傘下に,NTTドコモNTTデータも入る。2000年12月,電気通信審議会(旧郵政省の諮問機関)は持株会社のグループ企業への出資比率を引き下げる再再編成を促す答申を行った。国内通信のガリバーとして地域電話を独占し,携帯電話,長距離電話でもほぼ50%のシェアを占める。本社東京。2011年資本金9379億円,2011年3月期売上高10兆3050億円。2011年3月期売上構成(%)は,地域通信事業34,長距離・国際通信事業12,移動通信事業41,データ通信事業10,その他3。株式会社は,NTTグループのR&Dの中核を担い,社員の約90%が研究開発スタッフ。
→関連項目NTTソフトウェア[株]国際電報三公社五現業新電電真藤恒通信事業電気通信省電報電話ポケットベル

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改訂新版 世界大百科事典 「日本電信電話」の意味・わかりやすい解説

日本電信電話[株] (にほんでんしんでんわ)

日本電信電話公社(電電公社)が日本電信電話株式会社法など,いわゆる電電3法(1984年12月成立)に基づき,1985年4月に民営化して発足した企業で,国内通信事業の最大手。正しくは〈にっぽんでんしんでんわ〉という。略称NTT。日本電信電話(株)の設立と電気通信事業の各分野における競争市場化により,1952年の電電公社の発足以来の国内の電気通信事業の独占体制に終止符が打たれた。民営化の背景には,(1)電気通信事業の独占性と,それに由来する電気通信市場の閉鎖性に対するアメリカからの市場開放圧力が高まってきたこと,(2)臨時行政調査会の基本答申(1982年7月)において,三公社の民営化の方針がうち出されていたこと,(3)高度情報化社会の進展に伴い,電気通信分野への進出を計画している企業,さらにはより安価で多様な回線サービスの供給を求める企業がともに通信回線の開放を強く希望していたこと,などがある。1985年の公社民営化に際しては,5年ごとにNTTの経営形態の見直しを行うことになっていた。この問題は96年末に決着した。NTT本体は99年持株会社となり,その傘下に長距離通信会社NTTコミュニケーションズとNTT東日本,NTT西日本の地域通信2社をおくこととなった。なお,おもな関連会社にNTTドコモ,NTTデータなどがあり,いずれも持株会社の傘下にある。資本金9380億円(2005年9月),売上高10兆8059億円(2005年3月期)。
電話
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日本電信電話」の意味・わかりやすい解説

日本電信電話
にっぽんでんしんでんわ

略称エヌティーティー NTT。国内電気通信事業会社。 1985年に日本電信電話公社の民営化により設立。 1987年に株式市場に上場。総資産,社員数,収益力で日本トップクラスの企業となる。将来の基幹産業として有望視される付加価値通信網 VAN事業などの情報通信分野で過去の実績を生かし主導権を確保している。独占を続けた国内の電気通信事業分野では,新電電各社の参入により競争激化に直面しながら,フリーダイヤル,一斉同報ファクシミリ,ダイヤル Q2 などの新サービス,中小企業向け専用回線を開始。携帯電話,データ通信の伸びも著しい。 1999年 ISDN市内通信で地域限定の定額制を導入し,拡大を目指す。 1999年7月から持株会社に移行。 NTT東日本,NTT西日本,NTTコミュニケーションズ,NTTドコモ,NTTデータなどをはじめ 438社を傘下にもつ。 2001年からはインターネット事業にも進出。音声伝送収入主体に 2001年度年間営業収入 11兆 6815億円 (連結) ,資本金 9379億 5000万円,従業員数 21万 3062 (2002年3月 31日現在) 。

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日本の企業がわかる事典2014-2015 「日本電信電話」の解説

日本電信電話

正式社名「日本電信電話株式会社」。略称「NTT」。英文社名「NIPPON TELEGRAPH AND TELEPHONE CORPORATION」。情報・通信業。昭和60年(1985)「日本電信電話公社」を民営化し設立。本社は東京都千代田区大手町。通信持株会社。業界最大手。傘下にNTT東日本・NTT西日本・NTTドコモなどを置き通信事業などを展開。東京(第1部)・ニューヨーク・ロンドンの各証券取引所上場。証券コード9432。

出典 講談社日本の企業がわかる事典2014-2015について 情報

世界大百科事典(旧版)内の日本電信電話の言及

【日本電信電話公社】より

…日本電信電話公社法に基づいて,1952年8月電気通信省を再編して発足した公共企業体で,電電公社と略称された。国内の公衆電気通信サービスの独占的提供主体としての電電公社は,発足以来,電信電話債券の発行等によって財源の確保に努力し,6次にわたる電信電話拡充五ヵ年計画を積み重ね,また,この過程において,通信技術の自主開発にもつとめた結果,世界のトップ・レベルに到達することができた。…

※「日本電信電話」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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