ソブリンリスク

百科事典マイペディア 「ソブリンリスク」の意味・わかりやすい解説

ソブリンリスク

ソブリン危機とも表記する。ソブリン(sovereign)は〈国家主権〉を指し国家の信用危機を意味する経済用語である。2009年のギリシア財政危機にはじまる欧州経済危機がスペインポルトガル,さらにイタリアの国家財政を直撃し,EU,ユーロ圏諸国の国債や主要金融機関の格下げ不安,さらに国家債務不履行デフォルト)の危機が浮上したことで,この言葉が広く用いられるようになった。2013年にはキプロスの危機的状況が明らかになり,欧州債務問題はさらに深刻化している。一般に新興国などで,経常赤字の増大や政情不安によって,国家の債務の返済能力に不安をもたらしソブリンリスクが高まることがあるが,近年では,グローバリズムが世界的に進み,国際金融市場が拡大しているため,財政赤字や公的債務残高の規模が大きい国家の支払い能力やファイナンス能力への不安が一気に高まる危険性が常に存在する。さらにそれが,周辺国や地域統合経済に拡大する。2010年以降の欧州経済危機をもたらしたユーロ危機欧州信用不安はその典型的な事例といえる。
→関連項目IMFイギリスイタリア欧州基金欧州金融安定ファシリティ欧州債務問題オランダ格付け会社キャメロンギリシアG20スペイン世界金融危機通貨危機デンマークドイツ野田佳彦内閣反格差社会運動ハンガリーフランスベルギーベルルスコーニメルケルモンティヨーロッパ中央銀行制度ヨーロッパ連合ラガルド

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソブリンリスク」の意味・わかりやすい解説

ソブリン・リスク
そぶりんりすく
sovereign risk

政府、中央銀行、地方公共団体、国際機関などの公的機関に対する信用リスク。英語のソブリンには「国家、統治者、最高の」などの意味があり、主として政府などが借金を返す能力がなくなり、国債の価値が大幅に低下したり、ときには紙くず同然となったりする場合に使われる。かつては政情不安、財政赤字、大災害などで新興国のソブリン・リスクが高まる事例が多かったが、2009年のギリシア財政危機以降は、イタリア、スペインといった南欧諸国やアイルランドなど先進国でもリスクが表面化する例が増えている。

 ソブリン・リスクが高まると、単に国債の債務不履行(デフォルト)のおそれが強まるだけでなく、国の格付けが低下し、その国の資金調達がむずかしくなり、利回りが上昇する場合が多い。また外国国債などを運用対象とする外債投資信託の基準価格(1口当りの価値)が下落することもあり、ギリシア危機後には日本最大の外債投資信託「グローバル・ソブリン・オープン」の基準価格も急低下した。ソブリン・リスクがどれほど高まっているかを示す指標にデフォルトに備える保証コストを表す「クレジット・デフォルト・スワップCDS)」の保証料率がある。

 同義語カントリー・リスクがあるが、カントリー・リスクは広く外国の企業や事業に投融資する場合にも使われるのに対し、ソブリン・リスクは海外の公的機関の信用リスクに限定して使われる。なお外国為替市場では、将来の決められた時期に事前に決めた為替レートで外貨を売買する為替予約実行されないおそれを意味する用語として使われる。

[編集部]

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FX用語集 「ソブリンリスク」の解説

ソブリンリスク

取引相手の国の事情で、締結してあった為替予約が実行できなくなるリスクのことをいいます。突然の政変発生や、資本流入規制などが課せられて、為替予約の実行が困難になる場合に起こるリスクで、カントリーリスクともいいます。

出典 (株)外為どっとコムFX用語集について 情報

世界大百科事典(旧版)内のソブリンリスクの言及

【カントリー・リスク】より

…主として海外投融資や貿易取引に付随するリスクをいうが,その意味内容としては,事業計画の妥当性にかかわるリスク(プロジェクト・リスク),取引相手先の信頼性にかかわるリスク(プライベート・リスク),為替リスクなどに該当しない取引相手国にかかわるリスクの総称として使われている。また,カントリー・リスクは,取引相手先の所属する国の外貨資金繰り悪化から対外債務履行が不可能になるリスク(ソブリン・リスクsovereign risk),投融資相手国政府の政策変更による国有化のリスク,そして相手国における革命,内乱,戦争など非常事態の発生によって通常の企業経営や貿易取引が困難となる非常危険リスクの三つに分類できる。 カントリー・リスクは相手国全体の状況変化から生ずるリスクであるが,相当に異質なリスクの集合概念である。…

※「ソブリンリスク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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