日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソブリン・リスク」の意味・わかりやすい解説
ソブリン・リスク
そぶりんりすく
sovereign risk
政府、中央銀行、地方公共団体、国際機関などの公的機関に対する信用リスク。英語のソブリンには「国家、統治者、最高の」などの意味があり、主として政府などが借金を返す能力がなくなり、国債の価値が大幅に低下したり、ときには紙くず同然となったりする場合に使われる。かつては政情不安、財政赤字、大災害などで新興国のソブリン・リスクが高まる事例が多かったが、2009年のギリシア財政危機以降は、イタリア、スペインといった南欧諸国やアイルランドなど先進国でもリスクが表面化する例が増えている。
ソブリン・リスクが高まると、単に国債の債務不履行(デフォルト)のおそれが強まるだけでなく、国の格付けが低下し、その国の資金調達がむずかしくなり、利回りが上昇する場合が多い。また外国国債などを運用対象とする外債投資信託の基準価格(1口当りの価値)が下落することもあり、ギリシア危機後には日本最大の外債投資信託「グローバル・ソブリン・オープン」の基準価格も急低下した。ソブリン・リスクがどれほど高まっているかを示す指標にデフォルトに備える保証コストを表す「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」の保証料率がある。
同義語にカントリー・リスクがあるが、カントリー・リスクは広く外国の企業や事業に投融資する場合にも使われるのに対し、ソブリン・リスクは海外の公的機関の信用リスクに限定して使われる。なお外国為替市場では、将来の決められた時期に事前に決めた為替レートで外貨を売買する為替予約が実行されないおそれを意味する用語として使われる。
[編集部]