朝鮮半島の雅正なる音楽。本来は祭礼音楽の意で、朝鮮王朝(李氏(りし)朝鮮)末期(1910)までは孔子を祀(まつ)る文廟(ぶんびょう)祭、李朝歴代王室を祀る宗廟(そうびょう)祭その他の社稷(しゃしょく)・圜丘(えんきゅう)・先農・先蚕・祈雨・山川などの各祭祀(さいし)の祭礼音楽をさすが、今日では朝鮮の伝統音楽を正楽と民俗楽に大別し、文廟祭礼楽(『凝安之曲』など)や宗廟祭礼楽(『保太平』『定大業』)などの「祭礼音楽」に、宮廷の宴礼楽(『寿斉天』『動動』など)や『霊山会相』などの器楽合奏曲および民間風流(プンニュ)(『呈祥之曲(別曲)』『千年万歳』など)を含む「風流音楽」と、歌曲(カゴク)・歌詞(カサ)・時調(シジョ)などの芸術声楽曲である「正歌(チョンガ)」、および大吹打(テーチュイタ)(『武寧之曲』)などの「行楽(ヘンアク)」(軍楽)を加えて正楽と称する。
[志村哲男]
なお、中国でも周代、宮廷において制作された音楽を「正楽」、大衆の音楽を「俗楽」とよんでいた。
[編集部]
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【朝鮮の雅楽】
狭義には中国の雅楽を受け継ぎ古制を備える文廟(孔子廟)の祭礼楽をいい,広義には李王家に伝わった宮廷音楽をさす。つまり,文廟の祭礼楽のほかに,唐楽(中国伝来の音楽),郷楽(朝鮮固有の音楽)を含めて,民俗楽に対するものとして正楽と称し,これを雅楽ということもある。これらは現在,韓国国立国楽院に継承されている。…
…伽倻琴は,《三国史記》によれば,6世紀に伽倻国嘉実王が中国の箏を模して作り,楽人于勒(うろく)が12曲を作曲したという。新羅時代の土偶をみると,現在の正楽(広義の雅楽)用伽倻琴(風流伽倻琴または法琴ともいう)と同じ特徴,つまり胴の尾端に羊耳頭を備えている。正倉院の新羅琴も羊耳頭を有し,12弦であった。…
※「正楽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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