改訂新版 世界大百科事典 「歪曲遠近法」の意味・わかりやすい解説
歪曲遠近法 (わいきょくえんきんほう)
perspective tordue[フランス]
動物を描く際,身体は側面から見,角や蹄(ひづめ)は正面ないし4分の3正面から見たようにねじ曲げて表す方法をいう。ブルイユによると,この描法は後期旧石器時代のオーリニャック期(ペリゴール文化)の絵画の特色で,ソリュートレ期およびマドレーヌ期の絵画には見られないとされた。しかし,その後の研究によって,マドレーヌ期の絵画,それもアルタミラ洞窟の絵画のような最も進化した段階の動物像にもこの描法が用いられていることがわかり,旧石器時代の絵画全体に普遍的な描法であるとされた。歪曲遠近法はアフリカやインドの先史時代の岩面画をはじめ,古代エジプトの壁画や浮彫の動物像にも見いだされる。また,古代エジプトの壁画や浮彫の人物像は,眼と胴体は正面観で,頭,腕,脚は側面観で表され,歪曲遠近法的描法を顕著に示す。
執筆者:木村 重信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報