段階発育説(読み)だんかいはついくせつ(その他表記)theory of phasic development

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「段階発育説」の意味・わかりやすい解説

段階発育説
だんかいはついくせつ
theory of phasic development

ソ連遺伝学者 T.ルイセンコによって 1928年に出された植物発育に関する学説。植物の発育は,質的に異なったいくつかの段階が,一定の順に連なった過程であり,一つの段階を経ないと次の段階へと進まず,また,どの段階が欠けても最終段階の生殖に達することができないというもの。たとえば植物には,一定の温度 (低温) ,湿度,空気を要求する温度段階と,開花結実に必要な光 (日長) を要求する光段階とがあり,これらの条件が満たされなければ植物は発育をまっとうできない。秋まき植物を春まきにした際,自然で開花をみないのはこれらの段階を経ていないからで,人為的にこれらの条件を満足させれば (この操作を春化処理,バーナリゼイション,ヤロビザチヤという) 開花させうる。ルイセンコは,コムギワタジャガイモなどの植物によってこの説を立てたが,その後,他の学者により動物 (たとえば蚕の眠り,エビ,カニ脱皮) や微生物 (たとえば細菌の成長) などにもこのような考えがあてはまるとされ,この考えが生物全体に広げられた。遺伝のルイセンコ説もこの考えの延長線上にあるが,遺伝についての彼の考えが根拠に乏しい独断であるのに対し,段階発育 (または発育段階) の理論は本質的な洞察を含んでいて,評価すべきものがある。

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