日本大百科全書(ニッポニカ) 「民主主義と教育」の意味・わかりやすい解説
民主主義と教育
みんしゅしゅぎときょういく
Democracy and Education
アメリカの哲学者・教育学者ジョン・デューイの主著。1916年刊。教育に関する彼の見解がもっとも包括的かつ哲学的に述べられており、副題も「教育哲学序説」となっている。わが国のほか、トルコ、ドイツ、ブラジル、中国、スウェーデン、イタリアなどで翻訳されており、現在世界でもっとも広く読まれている教育哲学書といってよい。全体は26章からなる。デューイによれば、教育は、個人および社会にとって経験の連続的な再構成とみなすべきであり、社会生活のなかに含まれる人間形成原理を学校教育に導入して、その活性化を図ることが肝心である、教育の目的は、教養主義と実利主義の対立を止揚して民主的な社会を具体的に実現してゆくことであり、そのための方法としては、皮相な児童中心主義でなく思考による経験の深化が必要であるとしている。
[長尾十三二]
『大浦猛著『実験主義教育思想の成立過程』(1965・刀江書院)』▽『森昭著『経験主義の教育原理』(1952・金子書房)』▽『松野安男訳『民主主義と教育』上下(岩波文庫)』