改訂新版 世界大百科事典 「民科」の意味・わかりやすい解説
民科 (みんか)
民主主義科学者協会の略称。1946年1月12日に東京で創立。戦時中に学問の自由を奪われていた広範な研究者がマルクス主義者を中心に参加した。初代会長は小倉金之助。創立時には,侵略戦争を阻止できなかったことを反省し,〈民衆の科学的欲求の結集〉〈反民主主義的な文教制度・政策・思想との闘争〉〈民衆の生活と文化のための科学の動員〉など〈民主主義科学の建設〉を目的とした。自然科学,社会科学や芸術部門の部会が設けられ,《民主主義科学》や《理論》(哲学部会),《歴史評論》(歴史部会)などの機関誌を刊行する。49年4月の第4回大会以後の最盛期には会員が1万名を超え,全国各地の支部や研究所班,学生班で多様な課題をとりあげて活動した。朝鮮戦争と講和締結の時期には〈国民的科学〉運動を提唱,54年に世界科学労働者連盟に加盟したが,しだいに参加する研究者が減り,財政上の破綻をきたして,57年には一部の支部,部会を残して組織全体の活動は消滅した。
執筆者:梅田 欽治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報