改訂新版 世界大百科事典 「水分計」の意味・わかりやすい解説
水分計 (すいぶんけい)
moisture meter
物質中に含まれている水分を測定する計器の総称。物質には固体,液体および気体の3態があり,気体中に含まれる水蒸気の含有率を測定する水分計をとくに湿度計として区別することが多い。水分の測定方法には,(1)秤量法,(2)密度による方法,(3)湿度による方法,(4)化学的方法,(5)電気的方法,(6)光学的方法などがある。(1)は試料を加熱して水分を蒸発させ,その前後の試料の質量変化を測定して含水率を直接求める方法であるから基準となる。赤外線水分計というのは試料の加熱を赤外線で行う(1)による計器であるが,赤外線の水分子による吸収スペクトルを測定する(6)による水分計をいうこともある。(2)は水分による試料の密度変化を,(3)は試料と平衡状態にある雰囲気の相対湿度を測定する方法である。(4)は水と化学的に反応する試薬によって水分を定量する方法で,カールフィッシャー水分計がある。(5)は水分によって変化する試料の電気抵抗や誘電率を測定する方法で,電気抵抗式,高周波式,あるいは誘電率式水分計といわれる。そのほかに水と他の物質とのα線吸収率の違いや,水素原子核が他の原子核に比べて中性子線の減速能力が大きいことを利用した水分計もある。木材,紙,繊維,穀物,食品,土壌など,それぞれの物質に応じて特有の水分計があり,主として(1)や(5)を利用したものが多いが,食品に関しては(3)も使われている。
執筆者:稲松 照子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報