普通の誘電体すなわち常誘電体では、電束密度Dは電界EにD=εε0Eのように比例し、比例係数εε0が絶対誘電率である。ここでε0は真空の誘電率であり、εはこの誘電体の絶対誘電率ε0を基準として示すところの比誘電率であるが、普通εのことを単に誘電率ということが多い。特殊の誘電体であるところの強誘電体(結晶に限る)においては、DとEとの関係は履歴曲線で表される複雑なものであるから、誘電率εはεε0=dD/dE(dは微分記号)という微分係数で定義される。かつこの微分は履歴曲線上のどの位置で行われるかが明記されなければならない。普通はE=0での誘電率すなわち初誘電率のことを単に誘電率という。
電束密度D、電界Eはいずれもベクトルであるから、誘電率εは、結晶誘電体では2階の対称テンソルであり、等方性誘電体ではスカラーである。気体のεは終始一にきわめて近い。液体のεはほとんど10以下であって、水のεの61.5は異例である。常誘電性結晶で100程度以上のεを示すものは強誘電体に近い物質である。
強誘電体のεは、一般に大きく、とくに絶対温度Tがキュリー点Tcに近づくと、一般には、ε=C/(T-T0)(Cはキュリー定数、T0はTcに等しいかまたは近い定数)に従って著しく大きい値をとる。強誘電体の一般に大きな誘電率は、小型で大きな電気容量をもつコンデンサーをつくるのに広く利用されている。誘電体の誘電率は周波数に依存する。この現象は誘電分散といわれ、誘電損失に伴っておこる。
[沢田正三]
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物質のなかの電気変位(電束密度)Dと電場Eとを結びつける物質定数で,
D = εE
の関係にあるεをいう.電場によって物質にどのくらいの電気分極が誘導されるのかの目安になる量.真空の誘電率ε0 に対するある物質の誘電率εを,その物質の比誘電率 εr という.
εr = ε/ε0.
コンデンサーの電極板の間に絶縁体を入れると電気容量が増えるが,比誘電率 εr の絶縁体を入れることによって,電気容量は真空の場合の εr 倍になる.通常は,この方法によって εr の値が決められる.εr の値の例:水78.54(25 ℃),ベンゼン2.284(20 ℃).
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…誘電体内部の任意の場所の電場をE,分極(単位体積当りの電気双極子モーメント)をPとするとき,D=ε0E+Pで定義されるベクトルDを,その場所の電束密度と呼ぶ。ここでε0は真空の誘電率である。誘電体の外部(すなわち真空中)ではP=0であるから,上述の関係はD=ε0Eとなり,電束密度と電場には本質的な差はなくなる。…
… 電気分極(単位体積当りの電気双極子モーメント)P,誘電体内の電場E,電束密度Dの間には, D=ε0E+P ……(1) D=ε′E=ε0εE ……(2) P=ε0χE ……(3) という関係が成り立つ。ここで(2)式におけるε′を(絶対)誘電率といい,これを真空の誘電率ε0=8.85×10-12F/mで割ったεを比誘電率という。(3)式のχは電気感受率で,これを用いると比誘電率εはε=1+χで与えられる。…
※「誘電率」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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