氾勝之書(読み)はんしょうししょ(英語表記)Fàn Shèng zhī shū

改訂新版 世界大百科事典 「氾勝之書」の意味・わかりやすい解説

氾勝之書 (はんしょうししょ)
Fàn Shèng zhī shū

中国,漢代の農書氾勝之撰。氾勝之の生没年代は不詳であるが,前漢成帝(在位,前32-前7)のころの官吏と思われる。本書には普通の規模の農家の耕作法と,山陵・傾斜地,都市近郊の土地狭小の零細農家を対象とした区田法とが書かれていたと想定され,後者が有名である。区田法には溝種法と坎種(かんしゆ)法の2種があって,前者は180尺×48尺(1尺=23cm)の矩形(くけい)の地に幅10.5尺の町(播種地)と1.5尺の溝(作業用の道)を交互に作り,町の中をさらに1尺幅の畝と溝とを交互に作って溝中に播種する方法である。後者は1.5尺平方(土地の厚薄,播種する作物により差がある)の地に広さ・深さ各6寸の穴をほり,穴の中に播種する方法。ともに播種した個所にのみ水と肥料を集中的に施す園芸的穀物栽培法である。しかし区田法は前記の特殊な条件の地および干害時の応急農法として後々も施行されたが,一般にそれほど普及したとは思えない。本書の原本は散逸し,現存のものは《斉民要術》などから逸文を集めたものである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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