池の主(読み)いけのぬし

日本大百科全書(ニッポニカ)「池の主」の解説

池の主
いけのぬし

や淵(ふち)に住み着いて、人に禍福や危害、霊異を与えると信じられてきた伝説上の妖怪(ようかい)。自然伝説でもっとも多いのが、淵や池の底から機(はた)を織る音が聞こえるという機織淵(池、沼)、蛇池などの伝説。悲劇の終末を迎えた娘が竜女、蛇、弁財天などに化した型が多い。かつて、祭りに、清らかな乙女をして忌機屋(いみはたや)で機を織らせ来訪神に供えた信仰の、名残(なごり)の伝承であろう。機織りは昔話でも重要なモチーフである。竜女が雨乞(あまご)いに結び付いているのもある。多数の膳椀(ぜんわん)を必要時に貸してくれるという椀貸淵なども、貸す者は水界の霊異者の竜女、河童(かっぱ)が多い。修行者や比丘尼(びくに)の死を伴って、念仏を唱えると泡が出る念仏池の伝説や、池の主が妖怪でも前身は人間の横死した御霊(ごりょう)というのは、無縁の精霊を説明して祟(たた)りを鎮める御霊信仰によるものである。夜叉(やしゃ)池、尼ヶ池、姥(うば)ヶ池、桝洗(ますあらい)池、嫁ヶ淵、傾城(けいせい)淵など、いずれも種々の挿話が出入したり、池の主も多様に変わっているが、型は同じである。

[渡邊昭五]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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